過剰な画像処理や合成 「星景写真」曖昧になるリアルとファンタジー
毎日新聞 / 2024年7月20日 19時0分
【合成】固定撮影した富士山と、同じ場所で赤道儀を使って撮影した天の川の写真を合成した「新星景写真」。1枚撮りでは表現できない星空も作り出せてしまう=山梨県富士河口湖町で2024年7月4日、手塚耕一郎撮影
星雲や銀河、星々そのものを撮影した写真は一般的に「天体写真」と呼ばれる。一方、景色の中の星空を表現した、いわば夜空の風景写真は「星景写真」と呼ばれ、近年急速に広まった。しかし、最近は過剰な画像処理や合成によって、現実離れした星空の写真がSNS(ネット交流サービス)を中心に拡散している。
星景写真は、星の光量はわずかなため、フィルム時代は1枚に数分以上の露光時間がかかった。現像するまで結果も分からず、経験だけが頼りだった。
しかし、デジタルカメラの進化で高感度撮影が可能になり、10秒程度の露光でも星空を撮影できるように。写真をすぐに確認できることや、アプリやソフトも進化し、写真のレタッチ(画像の調整)も簡単に、補正は過度になっている。
写真の合成の種類はさまざまだ。「天体写真」で一般的に使われるのは、同じ被写体を撮影した複数の写真を重ねる「コンポジット」や「スタック」。新聞写真でも度々登場する「比較明合成」は、数百枚の写真を重ね合わせ、それぞれの最も明るい画素のデータを利用して1枚の画像にする手法だ。これらの手法は星をそのまま写しているという点でも、手法そのものに賛否が問われるような方法ではない。毎日新聞では写真説明の後に、手法を明記するようにしている。
一方、近年広まっているのは地上風景と星空を別撮りして、後から合成する手法だ。「新星景写真」と呼ばれる方法では、赤道儀を用いて地上風景を固定撮影し、続いて空高い位置になった天の川など星々を追尾して撮影する。高い位置の天の川はより鮮明に写り、地上風景と合成すると星景としての見栄えも良くなるというわけだ。
合成を助けるさまざまなソフトも開発されていて、さらに自由度を高めれば、全く別の場所の風景の組み合わせや、レンズや撮影日が異なる画像の合成も容易に作れる。SNSなどで見かける現実離れした写真は、このような合成手法が使われ、時間軸も空間も異なるものが多々見られるようになった。
星景だけでなく、写真全体のリアルとファンタジーの境界は、今後ますます曖昧になっていくだろうか。【手塚耕一郎】
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