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8年間で「トランプ党」化した共和党 専門家が見たトランプ氏の演説

毎日新聞 / 2024年7月19日 20時6分

渡辺靖・慶応大教授=本人提供

 米共和党の大統領候補に指名されたドナルド・トランプ前大統領(78)が18日、党全国大会で受諾演説を行った。トランプ氏の演説にはどんな特徴があったか。米国政治に詳しい渡辺靖・慶応大教授に聞いた。

 米共和党大会でのトランプ前大統領の演説は、党内の穏健派に加え、本選を見据えて重要となる無党派層に焦点を当てたものだった。銃撃事件が起き、国民の同情がトランプ氏に集まる中、演説の前半は非常に感傷的かつソフトな話しぶりで、人間味を出したものだったと言える。

 トランプ氏は演説で、民主党のバイデン大統領の名前をほぼ挙げずに自身の主張を訴えた。党派対立にうんざりした有権者を意識してか、露骨な攻撃スタイルを控え、国民融和や団結、寛容さを呼びかけた。従来のような戦闘モードから転換した印象を受けた。

 演説後半の政策面では、従来通り有権者の関心が高いインフレ問題や、不法移民対策などの主張を繰り返し行った。その一方、(保守層から連邦法による一律規制を求める声のある)人工妊娠中絶に関してはほぼ言及しなかった。権利の擁護を求める無党派層を意識したとみられる。

 今回の党大会を通じて印象的だったのは、トランプ氏が初当選した2016年以降の8年間で、共和党が「トランプ党」化したという点だ。

 16年のトランプ氏は「アウトサイダー」の異端的存在で、党主流派とトランプ氏の双方が不信感を募らせていた。しかし、時がたつにつれて、トランプ氏に反旗を翻す人物は淘汰(とうた)され、異を唱える人は少なくなった。

 トランプ氏が党関係者に幅広く謝意を示すなど、会場全体は温かい雰囲気だった。16日には候補者指名争いでトランプ氏への不満票を取り込んだニッキー・ヘイリー元国連大使が演説するなど、挙党態勢も演出された。

 かつて共和党内には自由貿易を重視し、移民についても米国の重要な資産という基本的な考え方があった。必要であれば、外国に積極的に介入する姿勢も見られた。しかし今回の党大会で「米国第一主義」を称賛するバンス氏が副大統領候補に指名され、ナショナリズムに貫徹された正副大統領候補が生まれたという意味では、共和党の大きな転換点と言えるだろう。

 大統領選の見通しとして、テレビ討論会で高齢不安を露呈したバイデン氏の撤退論が加速するなど、民主党としては厳しい戦いを強いられている。国民融和を訴えるトランプ氏への露骨な批判も難しく、好転材料が少ない印象だ。トランプ氏が求心力を高める中、今後の民主党大会などを通じて、どれだけ状況を立て直せるかが注目される。【聞き手・松本紫帆】

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