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核のごみ原発立地自治体の3割 国などの情報発信「不十分」

毎日新聞 / 2024年7月23日 5時30分

佐賀県玄海町の外津漁港の街並み。右奥は九州電力の玄海原発=佐賀県玄海町で2024年4月24日、本社ヘリから

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の選定で、佐賀県玄海町が原発立地自治体として初めて文献調査受け入れを決め、6月に調査が始まった。原子力発電環境整備機構(NUMO)が2002年に候補地の公募を始めて20年超が過ぎたが、調査に入ったのは3自治体のみ。処分場建設のメドが立たないまま、原発立地自治体には使用済み核燃料がたまり続ける。毎日新聞が原発立地自治体にアンケートをしたところ、調査受け入れを容認する自治体はなかった一方、選定の進め方に不満の声も出た。

 毎日新聞は6月~7月上旬、玄海町を除く原発が立地する13道県と21市町村(青森県大間町は建設中)に「核のごみ」最終処分場に関する質問状を送り32自治体から回答を得た。福島県双葉町は「東京電力福島第1原発事故で被害を受けている」、福井県高浜町は「回答により最終処分地の選定に影響を及ぼしかねない」として回答しなかった。

 政府は最終処分場の候補地を10程度から1カ所に絞り、使用済み核燃料を再処理したガラス固化体4万本超を埋設する考えだが、すでに約2万7000本に相当する廃棄物が存在する。多くが各地の原発立地自治体に留め置かれている。

 アンケートで今後調査を受け入れる考えがあるか尋ねたところ、17自治体が「ない」と回答し、「ある」とする自治体はなかった。15自治体は「どちらでもない」やその他の回答だった。

 このうち基礎自治体では、10市町村が受け入れる考えはないと回答。理由として、「現時点で具体的な検討をしていない」(北海道泊村)▽「町の地形的条件は最終処分地の選定で優位性を持たない」(愛媛県伊方町)▽「発電、再処理、最終処分については各地域が役割を分担するのが立地側全体の立場」(宮城県女川町)――などを挙げた。

 選定の第1段階である「文献調査」後に、第2段階の「概要調査」や最終段階の「精密調査」に進むには都道府県知事の同意も必要となるが、13道県のうち、青森▽福島▽静岡▽石川▽島根▽佐賀▽鹿児島――の7県は受け入れる考えはないと回答。北海道は質問への直接の回答はしなかったが、現在文献調査に応じている寿都(すっつ)町や神恵内(かもえない)村の概要調査への移行について改めて反対の立場を示した。

 今後、調査を受け入れる自治体が増えるべきかについては、12自治体が「増えるべきだ」と回答。「増やす必要はない」はゼロで、「どちらでもない」などその他の回答は20自治体だった。「どちらでもない」を選択した新潟県柏崎市は「適性が認められれば拡大すべきだし、疑問符が付くような地は調査対象とすべきでない。拡大ありきで進めるべきではない」との認識を示した。

 国や処分場の選定を進めるNUMOの最終処分場に関する情報提供については、10自治体が「不十分」と回答。新潟県刈羽村は「広く全国に向けた情報提供という点でまったく足りない」、福島県富岡町は「公募開始から20年以上経過しても議論の広がりは感じられない」と厳しい意見が出た。鹿児島県は「定期的な情報提供を受けており、自治体向けの説明会を毎年開催している」として、唯一「十分」と回答した。

 自由記述では北海道が、選定の流れに乗るのが市町村の手挙げ方式となっている現状について「地盤の安定性や輸送適性などから最適な処分地を選定するという観点で課題がある」と指摘。「国が全国の適地を調査し候補地を絞り込むとともに、住民に丁寧に説明し理解を得るなど、選定プロセスの見直しを行うべきだ」と訴えた。女川町は「国政に関わる全政党、党派が同じテーブルに着き、最終処分についてのルール作りを実施すべきだ」と求めた。【森永亨、五十嵐浩隆】

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