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フィルム映写機で「原爆の子」再上映へ 「オッペンハイマー」契機

毎日新聞 / 2024年7月26日 14時0分

映画館「八丁座」で使われている35ミリフィルム映写機=広島市中区で2024年7月4日、大西岳彦撮影

 役目を終えたはずの映写機がヒロシマの継承に一役買うことになった。広島市の繁華街にある映画館「八丁座」が8月2日から、新藤兼人監督の名作「原爆の子」(1952年)をリバイバル上映する。きっかけは今年のアカデミー賞7部門を受賞した米映画「オッペンハイマー」だった。

 八丁座は百貨店の福屋八丁堀本店8階にあり、毎年夏には戦争や平和をテーマにした作品を特集して上映している。戦前に創業した百貨店は原爆に耐えた被爆建物で、被爆直後には臨時の救護所になった。

 「原爆の父」と呼ばれた天才物理学者を主人公とした「オッペンハイマー」は話題となったが、広島と長崎の惨状を描かないストーリーが論議を呼んだ。日本上映が決まると、八丁座では3月に被爆者らを招いた試写会が開かれた。

「原爆の子」が伝えたこと

 映画の上映はデジタルが主流となっているが、「オッペンハイマー」は35ミリフィルム版も製作され、支配人の蔵本健太郎さん(46)は日本での配給会社からフィルム上映も持ちかけられた。

 八丁座で使っていた映写機で最後の1機は7年前を最後に使われなくなり、映写室にそのまま置いてあった。手狭なため撤去する予定だったが、「フィルム版ならではの画質や音の厚みがある」との思いから打診に応じ、フィルムを映写機にかけて動かしてみると問題はなかった。4月中旬から「オッペンハイマー」のフィルム版上映を始めた。

 映写機を残そうと思い直し、考え付いたのが、旧作のリバイバル上映だ。蔵本さんの頭には、新藤監督の「原爆の子」が真っ先に浮かんだ。「オッペンハイマー」を上映したことで、「日本で作られた原爆映画に目を向けるきっかけにならないか」との思いもあった。

「映画は世界を知る窓」

 「原爆の子」は原爆を題材にした映画でも有名な作品で、広島をロケ地に撮影された。原作は原爆を体験した子どもたち105人分の作文を収録した同名の書籍。2012年に100歳で没した新藤監督は広島県出身で、郷土を代表する映画人だった。蔵本さんは「生命力にあふれた映画。新藤監督は生きるエネルギーを常に伝えようとしていた」と言う。

 「原爆の子」は八丁座では戦後70年の15年以来となるリバイバル上映で、8月8日まで。映画館のスクリーンでフィルム版を鑑賞できる貴重な機会となる。8日まで「オッペンハイマー」も上映中で、原爆をテーマにした日米の作品が並び立つ。

 「映画は世界を知る窓」と言う蔵本さんは「広島のまちなかにある映画館として、原爆や平和をテーマにした作品の上映にはこだわってきた。奇跡的な映写機の復活を今後も生かしたい」と話している。【宇城昇】

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