1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

物価高でフードバンク事業「曲がり角」 求められる“仕組み”とは

毎日新聞 / 2024年8月2日 7時15分

セカンドハーベスト名古屋の倉庫。団体支援向けのカートに積まれる食品の量は少ない=名古屋市北区で2024年6月12日午後0時31分、荒木映美撮影

 企業などから寄せられた食品を生活困窮者に届けるフードバンクの運営事業者が、食品不足にあえいでいる。企業の環境・物価高対策に伴う食品ロス削減の取り組みが進んでいるためだ。フードバンク事業について関係者は「曲がり角に来ている」と不安を漏らす。

 フードバンクを運営するNPO法人「セカンドハーベスト名古屋」(名古屋市北区)によると、2020年から22年までは食品の寄付が毎年500トンを超えていた。だが23年は453トン、今年は400トンを切る見通しだという。

 20年の新型コロナウイルス流行期は、寄付量と受け取り希望者がいずれも前年よりも増えた。だが、23年以降は寄付量が右肩下がりなのに対し、受け取り希望者は物価高などに伴う生活苦を背景に増加の一途をたどる。

 セカンドハーベスト名古屋の倉庫を訪れると、22年までは所狭しと食品が積まれていた棚は「スカスカ」(同法人スタッフ)だった。不足分を補おうと、寄付金を食品購入費に充てているが、団体向けの支援量は現在、22年の3分の2ほどに落ち込む。自治体との連携協定に基づき個人向けの支援量は減らせず、やむなく団体支援分を削減しているという。

 セカンドハーベスト名古屋から食糧支援を受ける団体の一つ、名古屋市港区の子ども食堂「わ」では、ここ数カ月で他の企業や団体からの食料品提供も減少した。食堂を運営する二村ジョンスンさん(59)は「これが続くとどうすればよいのか」と戸惑いを見せる。

 一方、食品ロスの削減に力を入れる食品メーカーでは在庫を生まないよう売れ行きの悪い商品の製造をやめるなど「無駄」を削減する動きが進む。原材料費やエネルギー価格の高騰に伴うコスト削減の一環で、フードバンク向けの食品保管・輸送費が削減対象となるケースもあるという。

 愛知県内のある食品メーカーの担当者は「食品ロスを出すのは本来あってはいけないこと。(食品の寄付は)たまたま出たものを有効活用していただけ」と明かす。

 こうした状況に、セカンドハーベスト名古屋の前川行弘理事長(76)は「食品ロスの提供を前提としたフードバンクは曲がり角に来ている。このままでは生活困窮者の支援が行き届かなくなる」と危機感を募らせる。

 食品の寄付を巡っては今年5月、国や地方自治体、民間事業者らが官民協議会を設立。食品寄付の促進に向けた仕組みづくりが始まっている。愛知県内の食品メーカー担当者は「(企業などによる)食品提供の取り組みを行政が評価する場があれば、自社商品のブランディングにもなる」と話す。

 セカンドハーベスト名古屋では現在、家庭で余った食品を持ち寄り、フードバンク団体に寄付してもらう「フードドライブ」活動に力を入れる。スポーツチームと連携して試合会場で食品を集めるなど食品確保に努めている。寄付などの問い合わせは電話052・913・6280で、平日午前9時から午後5時まで受け付けている。【荒木映美】

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください