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兵庫知事「肝いり」特殊詐欺対策、利用は目標の4% PR不足原因か

毎日新聞 / 2024年8月2日 10時21分

特殊詐欺被害の防止を呼び掛ける兵庫県の斎藤元彦知事(右から3人目)ら=同県伊丹市で2024年1月22日午後0時24分、宮本翔平撮影

 兵庫県の特殊詐欺対策事業が難航している。65歳以上を対象に自動録音機付き電話機を「実質無料」で購入できるよう補助するが、申請件数は7月上旬時点で目標の4%、約5200件にとどまる。斎藤元彦知事肝いりの施策だが、過去最多を記録した前年を上回るペースで被害は拡大しており、成果は上がらない。県警は制度活用を呼び掛けている。

 「悪質な特殊詐欺から暮らしや財産を守るため自動録音電話機を設置しましょう。兵庫県では全国一の規模で対策を強化します」

 県の特殊詐欺対策のウェブサイトでは、斎藤知事が顔写真付きでこう呼び掛けている。1月には自ら伊丹市の大型商業施設で啓発のチラシを配っていた。

 補助は最大で録音機能付き電話機が1万円、外付け録音機は5000円。一般的な機種なら補助額内での購入が可能だ。県は固定電話を持つ高齢者世帯の半数が申請すると見込み、13万件の目標を掲げて2023年12月に13億円の補正予算を組んだ。

 ところがPRは足らず、申請は4月の受け付け開始直後から伸び悩んでいる。県関係者によると、申請の複雑さも低迷の要因とみられる。申請ルールは各市町が定めているが、一部では地域振興を兼ね、補助対象となる電話機の購入先を自治体内の店舗に限定しているところも。「ルールを簡潔にし、統一すべきだったかもしれない」と関係者はこぼす。

 県警によると、県内では23年、過去最多となる21億9000万円の特殊詐欺被害が確認された。24年6月末時点では597件の被害があり、被害額は前年同期比約2億2000万円増の約8億9000万円に上る。

 県のPR不足があるとしたうえで、県警の担当者は「特殊詐欺に対し『自分は大丈夫』と思う方が多いのも申請が少ない原因だ」と分析する。「録音機があれば犯人は電話を切ることが多く、効果的な対策といえる。万一に備えるためにも、ぜひ制度を活用してほしい」と呼び掛ける。

現場は「水際」で奮闘

 兵庫県が推進する特殊詐欺対策の自動録音機付き電話機の普及が難航する中、コンビニ店員らが「水際」で奮闘している。県警によると、2023年に発生が確認された特殊詐欺に対し、周囲の声掛けなどで阻止できた割合は62・2%。全国平均の54・6%を大きく上回る。

 「アップルのギフトカードはどこにありますか」。県内で詐欺被害が集中する西宮市のコンビニで6月、60代男性が店員に尋ねた。不審に思ったアルバイト店員の古山綾乃さん(21)が話を聞くと、「パソコンがおかしくなって、4万円のギフトカードを買えば直ると電話があった」という。パソコンがウイルスに感染したなどと偽り、復旧名目で金銭を要求する「サポート詐欺」の手口だった。だが男性は「詐欺ではない」と話を信じ切った様子。

 古山さんは先輩店員の富田数馬さん(31)に相談した。富田さんは過去5年間の勤務で3回、特殊詐欺を防いだ経験がある。「支払いでギフトカードを要求するのはおかしい」と詐欺を確信し、男性を説得して通報。2人は未然に防いだとして、西宮署から感謝状が贈られた。

 「感謝状をもらうのはありがたいが、詐欺の被害が減らないことに複雑な気持ちがある」と富田さん。「『僕たちは絶対に通さない』という強い気持ちを持ちたい」と語った。

 県警によると、24年6月末時点でコンビニ店員などの察知により被害を阻止できた件数は前年より75件多い1124件。担当者は「水際で頑張ってくださっている方々のためにも、入り口(自動録音機付き電話機の普及)の対策を強化していかなくてはならない」と力を込める。【大野航太郎、木山友里亜】

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