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光る「北海道石」発見まで 児童雑誌で紹介 新鉱物の名付け方なども

毎日新聞 / 2024年8月2日 8時45分

北海道石を発見した田中陵二さんと、これまでに田中さんが執筆した3冊の「たくさんのふしぎ」=神奈川県海老名市で2024年7月30日午後6時53分、今井美津子撮影

 紫外線を当てると黄色く輝く不思議な石。2023年に新鉱物として認められた「北海道石」を発見するまでの道のりが、小学生向け科学雑誌「たくさんのふしぎ8月号」(福音館書店)に、「光る石 北海道石 新鉱物Hokkaidoite(ホッカイドウアイト)はっけん記」としてまとめられた。発見や命名に携わった田中陵二さん(51)が、さまざまなエピソードを余すところなく紹介している。

 北海道石は愛別町の鉱山跡から発見され、鹿追町の大雪山国立公園内で産出されるオパールの中からも見つかった。紫外線を当てると黄色っぽく輝き、田中さんらの分析の結果、新種の有機鉱物だと判明。23年1月、国際鉱物学連合に「北海道石」(学名・ホッカイドウアイト)として登録された。

 群馬県出身の田中さんは子どものころ、登山が趣味の父に連れられて山に出向き、石集めに夢中になった。小学5年の時には1人で自転車に乗り、自宅から片道約75キロ離れた栃木県の足尾銅山まで鉱物採集に行ったという。

 中高生になると電車で九州や四国を訪れるようになり、田中さんは「携帯電話もない時代。お金がなくて、公衆電話から自宅の電話にかけて、2回鳴らすことが『無事』という合図だった。親はだいぶ心配したみたい」と笑う。

 約6000種ある鉱物のうち、99%は無機物で、北海道石のような炭素を含む有機鉱物は1%しかない。田中さんは相模中央化学研究所(神奈川県)で有機金属の研究者として働く傍ら、石の勉強も続けていたといい、「有機化学と無機化学の分析手法は全く違う。両方知っていたからこそ、新しい鉱物を発見できた」と振り返る。

 たくさんのふしぎは小学3年生以上を対象にした科学雑誌。毎月一つのテーマについて、専門家が分かりやすく解説している。

 田中さんは22年8月号、23年10月号に続き今回で3度目の執筆。今回は北海道石の調査のいきさつや分析の方法に加え、新鉱物の名付け方、盗掘からの保護などについて分かりやすく書かれている。

 本では愛別町や鹿追町での調査の様子も詳しく紹介。鹿追町では夜の森に1人で残り、沢の底にある一枚岩に紫外線ライトを当てると、暗闇の中で石がさまざまな色で光り輝いて「この世のものとは思えない、美しいながめでした」とつづった。

 毎回、科学の基礎知識がなくても理解できるようにするのに苦労するという。「大人の文章の漢字にふりがなを振るだけでは子どもは分からない。でも、子どもだましにしてしまうと見抜かれてしまう」と話す。田中さんは自分の子ども時代を振り返りながら、「子どもたちには自分がおもしろいと思ったことにとことん熱中してほしい」と語った。

 税込み810円。たくさんのふしぎは毎月上旬に最新号が発売され、バックナンバーも全国の書店などで購入できる。【今井美津子】

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