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解体住宅に宿る記憶残す 富山・氷見の夫妻が古材レスキュー

毎日新聞 / 2024年8月4日 15時30分

 能登半島地震で大きな被害があった富山県氷見市。海に近い同市中央町の商店街でパン屋を営みながら、街づくりや環境などの社会問題について勉強会を開いてきた竹添あゆみさん(41)、英文さん(38)夫妻は地震後、自分たちに何ができるか模索してきた。半壊以上の住宅を行政が費用負担して解体する「公費解体」が進んでいるが、2人は今できることとして「古材レスキュー」の取り組みを始めるという。どんな取り組みなのか、話を聞きに行った。【萱原健一】

 倒壊の危険がある住宅や寺社などに残された文化財を「救出」する「文化財レスキュー」という言葉はよく聞くが、「古材レスキュー」は耳慣れない。竹添さん夫妻がこの言葉を知ったのは、長野県諏訪市で古材や古道具のリサイクルショップを営む「リビルディングセンタージャパン(リビセン)」の取り組みを通してだという。

 リビセンでは、解体される建物や空き家から床板などの古材や家具を買い取ることを「レスキュー(救出)」と呼ぶ。救出してゴミを減らし、環境への負荷も減らす取り組みだ。引き取った板やレトロなガラス、古い家具や建具は販売し、新しい担い手に託す。

 この取り組みを公費解体が決まっている氷見の住宅に応用できないか。竹添さん夫妻は2月上旬、県内外の建築家らと富山県内の被災地を見て歩いた。現地の状況を把握し、復興への取り組みを模索する中で、以前から言葉としては知っていた「古材レスキュー」を始めようと考えた。

 取り組みの第1弾として今月11日、東京都立大大学院で建築を学ぶ田畑快人さん(24)を招いて学習会を開く。田畑さんは石川県加賀市出身。大学院の指導教員を介して竹添さん夫妻と知り合い、5月下旬に氷見市の被災地を訪れた。「液状化で微妙に傾き住めない家が多く、そういう家の古材をレスキューできたら、破損の少ない材を次の建物に使えるのではと思った」

 田畑さんは氷見市訪問後、リビセンで古材活用のノウハウを学ぶスクールに参加。古材を回収する際、重機は使わず、建物の構造に関係ない部分をバールなどを使いながら手ではがせる範囲で回収することなどを学んだ。取り出した材は建具だけでなく、家具やアート作品など多様な使い道があり、その選択肢を示すつもりだ。

 氷見市では1938年に市街地を焼き尽くしたとされる「氷見町大火」があったが、竹添さん夫妻が暮らす中央町や近隣には、大火を免れた古民家がある。戦後は輸入木材が使われるようになり、戦前の民家に使われた国産材は貴重。氷見の古民家も年代的には地元木材が使われていた可能性が高いという。

 「その貴重な古民家も今回の地震で解体されるでしょう」と英文さん。市内では住宅6000棟以上が被害を受け、公費解体も6月から始まっている。「全ての古材を再利用することは難しいが、全てが廃棄されることも避けたい。長く使われた古材だからこそ価値があり、そこに宿る象徴的な街の記憶を一部でも残せたら」。今後、交流のある建築家や地元の建設会社などと「緩やかなネットワーク」を築き、次の担い手につなぐ仕組みを民間有志で作る考えだ。

 11日の学習会は「考えるパン KOPPE(コッペ)」で午前10時~正午。参加費は2000円(学生は無料)とワンドリンク制(ゲストへの謝礼など)。定員10人。申し込みはメール(kangaerupankoppe@icloud.com)へ。

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