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ミツバチとの共生 自治体で全国初、養蜂手がけ12年 埼玉・坂戸

毎日新聞 / 2024年8月5日 10時30分

坂戸市のミツバチプロジェクト責任者の宮寺祥仁さん=埼玉県坂戸市泉町3の環境学館いずみで2024年7月11日、仲村隆撮影

 自治体が自らミツバチの飼育を手がけ、養蜂を市民に広める全国でも珍しい取り組みを埼玉県坂戸市が始めてから今年で12年目になる。ミツバチと共生できる環境づくりと、ハチミツを活用した地域おこしの二つの目標を掲げて事業を進めてきた。事業の開始から担当してきたプロジェクトの責任者、宮寺祥仁さん(69)にこれまでの歩みを聞いた。【仲村隆】

 ――プロジェクトに関わるようになった経緯は。

 ◆坂戸市は全国初となる自治体によるミツバチの飼育を2013年から手がけています。12年4月に当選し、趣味が養蜂という石川清市長の発案で、新規事業として養蜂をやろうということになりました。

 プロジェクトが始まる前から興味があって、私も個人でミツバチを飼っていたんです。当時は市の環境部長を務めていました。市の幹部で養蜂のことを知っている人物なんて他に誰もいなくて、私にお鉢が回ってきたというわけです。自治体がミツバチを飼育するプロジェクトは全国でも例がなく、反発もありましたが、今では名物事業として知られています。

 ――事業はボランティアが主体だとか。

 ◆市民から「ミツバチボランティア」を募って、養蜂技術の研修・講習を行っています。定員5人で任期は3年。週1回、ミツバチの世話をし、養蜂のノウハウを習得してもらっています。これまでに約50人が参加しました。ここを“卒業”した人たちは趣味のレベルでミツバチを飼う人もいれば、養蜂家として活躍する方もいます。ミツバチを飼うためには巣箱を置く場所以外にも蜜源の植物が必要です。そのため、植物の植栽を進めたり、市がボランティアの方々に遊休農地をあっせんしたりしています。

 ――専門家のアドバイスを受けるようになったのが事業の転機とか。

 ◆ミツバチの飼育は自然相手。やり方がまずければ、巣箱が全滅したり、群れが逃げ出したりと一筋縄ではいきません。事業の開始から養蜂に悪戦苦闘する中で、18年から玉川大農学部元教授の干場英弘さん(77)の指導を受けるようになりました。それまでは、手探り状態でしたが、専門家のアドバイスを受けたことで、安定した収穫ができるようになりました。今では、ハチミツの収量が当初の倍の100キロほどに増えました。

 ――学校給食にも出しているとか。

 ◆養蜂を理解してもらう食育を兼ねて、昨年から市内の全小中学校の給食にミツバチプロジェクトのハチミツを使ってもらっています。スタートはハチミツを入れたレモンゼリーでしたが、児童・生徒らには好評だったようです。

 また、蜂蜜の販路拡大のため、養蜂に取り組む人たちを市内の飲食店に紹介する事業にも乗り出し、新たなメニューや特産品づくりに活用してもらえるよう進めています。ふるさと納税の返礼品にも採用しています。

 ――なぜ、自治体がミツバチを飼うのか。

 ◆ミツバチは環境の変化に敏感な生き物で、ミツバチが元気に飛び回る街は豊かで健全な自然環境がある証しといえます。ミツバチと住める環境を維持することが、私たちを取り巻く自然環境を維持することにつながります。また、ミツバチは植物の受粉に大きく関わり、健全な農業の一翼を担う存在です。養蜂から採れるハチミツは市の特産物として活用も期待されます。市としては魅力ある産品に育てると共に、ミツバチとの共生を目指した街づくりにも力を入れていけたらと思います。

宮寺祥仁(みやでら・よしひと)さん

 1955年、ときがわ町生まれ。城西大経済学部卒。78年坂戸市入庁。財政係長、職員課長、企画調整幹などを経て環境部長の時にミツバチプロジェクト事業の担当になった。2015年に定年退職。22年4月から任期付き一般職採用でミツバチプロジェクトを担当する市環境学館いずみ課長補佐(専門員)に。

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