核使用の危機迫る世界 台湾有事など研究グループが想定する被害規模
毎日新聞 / 2024年8月9日 18時42分
「私たち人類は、『核兵器を使ってはならない』という人道上の規範を守り抜いてきました。しかし、実際に戦場で使うことを想定した核兵器の開発や配備が進むなど、核戦力の増強は加速しています」
9日の平和祈念式典で読んだ平和宣言で、長崎市の鈴木史朗市長は核兵器使用に対する強い危機感を示した。実際、世界では核兵器廃絶が進まず、むしろ逆行する動きが強まっている。
長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)によると、2024年6月の推計で「退役・解体待ち」を加えた核弾頭総数は1万2120発で減少傾向にある。しかし、既に配備されているか、配備に備えて貯蔵されている「現役核弾頭」は9カ国で9583発あり、18年以降、増加傾向。ロシアは核兵器の実戦使用をちらつかせながら、ウクライナ侵攻を続け、中国も核戦力を増強している。
欧州や中東だけでなく、日本の周辺でも軍事的緊張は高まっている。RECNAなどの国際研究グループは21~23年度、北東アジアで核兵器が使われた場合の被害をシミュレーションし、使用を回避するための政策などを提言した。
研究では30年までに北東アジアで起こり得る事例を検討。①北朝鮮②米国③テロリスト④ロシア⑤中国--が核兵器を使用し、核戦争が勃発(③を除く)した場合について被害規模を算出した。
最も被害が大きいのは、台湾有事を想定した⑤のケース。中国が台湾を攻撃し、米国が台湾の反撃を支援する際に、中国が「核の先制不使用」の宣言を放棄して核兵器の先制使用に踏み切ってしまうという想定で、最終的に米中が24発の核兵器を使用する。日本や韓国の米軍基地も核兵器による攻撃を受け、1年以内に260万人が死亡し、加えて被ばくの影響で長期的に最大83万人が亡くなると推計されている。
RECNAの鈴木達治郎教授は「世界は冷戦時代よりも複雑で不確実な状況にある。米露の対話がなく、中国や北朝鮮など複数の国が絡んでおり、どこでどう緊張が崩れ核が使用されてしまうかが分からない」と指摘し、「軍事的に核抑止力を強化するのではなく、緊張緩和のための政策が必要だ」と訴えた。【日向米華】
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