原発の運転、南海トラフ臨時情報を受けた取り決めなし 各電力会社
毎日新聞 / 2024年8月9日 20時44分
南海トラフ地震の被害が想定される地域には複数の原発がある。気象庁が南海トラフ地震の臨時情報を発表した場合、運転に関する措置を定めた原発はないことが、各電力会社への取材でわかった。
政府が南海トラフ地震の防災対策を進める29都府県707市町村に立地するのは、九州電力川内原発(鹿児島県)▽四国電力伊方原発(愛媛県)▽中部電力浜岡原発(静岡県)▽日本原子力発電東海第2原発(茨城県)――の4原発。
8日のマグニチュード(M)7・1の地震では、臨時情報「巨大地震注意」が発表された。このうち唯一運転していた川内2号機は運転を継続。残りは定期検査などで停止中で、運転への影響はなかった。
4社によると、地震や津波で原発を止めるのは、敷地で観測された地震の揺れ(ガル)が基準を超えた場合だ。敷地で揺れを観測したのは川内(震度2)だけで、いずれも基準を満たさなかった。
九電によると、運転中の原発を手動停止する基準の一つに「大津波警報の発表」があるが、臨時情報で止める決まりはない。九電は「川内原発は南海トラフ地震を考慮した設計となっており、今回の地震で特別な対応は必要ないと考えている」と話す。
四電も、臨時情報に対する明確な取り決めはない。「臨時情報が発表された場合でも、直ちに運転停止をする必要はないと考えている。ただ、状況に応じて関係機関とコミュニケーションを取りながら適切に対処する」と答えた。
浜岡は南海トラフ地震の想定震源域にあるが、中部電も臨時情報に応じた対応は決めていない。日本原電も同様に決めていないが、東海第2については九電と同様に、大津波警報の発表を停止基準に盛り込む方針だ。
原子力規制庁は8日、全国の原発事業者に臨時情報を周知し、防災態勢を改めて確認する一斉メールを送った。規制庁によると、南海トラフ地震関連の情報が発表されると、委員長の判断で事故警戒本部を設置するが、今回は「総合的に判断」した結果、必要性はないと判断した。
原子力防災を担う内閣府は、原子力災害対策指針に臨時情報について明記されておらず、対応する基準はないとしている。【高橋由衣、木許はるみ】
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