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かつての夢は養護教諭 タレント・丸山礼さんの根底にあるもの

毎日新聞 / 2024年8月15日 12時30分

インタビューに答えるお笑いタレントの丸山礼さん=東京都渋谷区で2024年7月30日、前田梨里子撮影

 どこかで見たような「あるあるネタ」などの多彩なモノマネのレパートリーを持つ北海道北見市出身のタレント、丸山礼さん(27)。動画投稿サイト「YouTube」チャンネル登録者数が128万人を超える人気ユーチューバーである一方、近年は俳優業にも挑戦するなどし、マルチな活躍を見せている。9月に公開の映画でスクリーンデビューも果たす。かつて養護教諭を目指していたという。古里の北海道に対する思い、今後の活動などについて聞いた。【今井美津子】

 「はにゃ?」。テレビ番組やYouTubeで疑問を投げかけるときの一言が高校生などに人気を呼んだ。明るくエネルギッシュなイメージがある丸山さんだが、子どものころは両親の離婚や友だち関係のトラブルなどがあり、悩むことも多かったという。

 北海道で過ごした小中高時代を通じて寄り添ってくれたのは、保健室の養護教諭だった。「落ち込むことがあると、保健室に行っていました。どの先生も優しく話を聞いてくれました。教室に送り出してくれ、すごく救われた。将来を考え、自分と同じような子のそばにいたいと思うようになりました」

 養護教諭になりたいという思いは強かった。しかし、転機が高校時代に訪れた。私立の女子高。得意な人間観察を生かし、休み時間になると、先生たちのモノマネを披露するようになった。「キャラクターが濃くて、マネしたくなる先生ばかりだった。授業が終わって先生が扉を閉めた瞬間、友だちに『まるちゃん、マネして』と言われていました。特進クラスでクラスメートの13人は3年間、同じクラス。環境の変化のない特殊性も影響したかもしれません」と振り返る。

 友だちの声がうれしくてモノマネに応える中、高校2年のとき、いまも所属する「ワタナベエンターテインメント」の養成所の説明会に書類を送った。力試しのつもりだった。「しばらく音沙汰がないと思っていたら、高3になって電話がかかってきて、オーディションに誘われました」。結果は最優秀賞を受賞。高校卒業後の上京を促された。

 養護教諭の道と悩んだものの、「東京でチャレンジするのは今の年齢しかできない」と決意した。周囲の大人からも応援の言葉をかけられた。母親は「母子家庭で我慢させてしまったから、やりたいならば行きなさい」と力強く背中を押してくれた。

 養成所時代は、ネタづくりとアルバイトに追われる日々。「東京は周りの人をライバル視して、北海道と違って、すごくピリついた社会に見えた。同年代の女の子の芸人なんていなくて、精いっぱいな18歳を過ごしていたな」

 高卒から1年後の2016年にデビューした。すぐにテレビの情報番組のレギュラー出演が決定するなどし、順調な滑り出しだった。しかし、得意としたモノマネのテレビ番組などで、ほかの出演者に圧倒された。芸人の世界の人数の多さに、「こんな母数が多いところで戦えない」と感じたという。レギュラー番組の終了も重なって、デビューから1年後に「あれ、何のために東京に来たんだっけ?」と迷いが生じた。

 救いの手は友人が差し伸べてくれた。活動の舞台として提案してくれたのがYouTube。中学生のころにツイッター(現X)、高校生でインスタグラムを始めたSNS(ネット交流サービス)世代。SNSは日常の一つだった。見た人が共感するような「あるあるネタ」をYouTubeに投稿すると「バズ」ったという。動画は自撮りだった。

 「世の中の人が私のネタを評価してくれて、これはいいものを見つけたなと思った」と言う。動画を見た企業から声がかかり、新たな仕事にもつながった。

 投稿したYouTubeの動画を見ると、「愚痴共有会」「やらかし共有会」などのようなフォロワーと気持ちを共有する内容の再生回数が多い。「会ったことのない私だから話せることもある。全部を吸い上げられるわけじゃないけれど、見てくれている人たちに寄り添いたい。今も保健室の先生になりたかったころとやりたいことは変わっていないんです」と柔和な笑顔で語った。

   ◇  ◇  

 丸山さんの芸能活動は共感を呼び、いまやテレビの連続ドラマで主演を務める俳優としても引っ張りだこだ。

 23年に放送されたNHKのドラマ「ワタシってサバサバしてるから」に主演。個性の強い主人公を好演した。24年にも民放の連ドラに出演し、今年9月に映画初挑戦となる「夏目アラタの結婚」の公開を控える。

 映画は、柳楽優弥さんが演じる主人公の児童相談所職員が、黒島結菜さん演じる連続殺人容疑をかけられた女性との獄中結婚をスリリングに描くサスペンスだ。丸山さんは主人公が憧れる児童相談所の先輩を演じる。「いままでは元気な役、ユーモアのある役が多かった。今回は温かみがあり、子どもに寄り添うおせっかいな雰囲気があった。自分と重ね合わせる部分もありました」と話す。

 作品の撮影は、これまでに経験のなかったシリアスなシーンに緊張した。印象に残っているのは、拘置所で黒島さんと対峙(たいじ)する場面。「感情をむき出しにしなければならなかった。人間の深い感情を表現できて、俳優として一歩前に進めたと思う。みなさんの反応を見るのが楽しみ」と語る。

 これまでのドラマの現場は盛り上げ役として共演者と積極的にコミュニケーションを取った。けれど、今作は「猟奇的な殺人犯役」の黒島さんにあえて話しかけずに距離を取った。一方、同僚という役どころの柳楽さんに対しては「初対面で握手してもらいにいきました」とちゃめっけたっぷりに明かす。

 今後は演技の幅を広げたいという。「バラエティーも俳優の仕事も続けたい。みんなの予想をちょっとだけ上回るような仕事ができたらうれしいかな」と目標を語る。

 マルチに活躍する丸山さんだが、地元への思いは人一倍強い。21年4月からは、北海道文化放送の情報バラエティー「いっとこ! みんテレ」内の月2回のレギュラーコーナー「丸山礼の勝手に北海道応援隊長!」に出演。多忙の中で、ロケのため、月に1度は北海道に戻る生活を送る。「北海道は空港で飛行機から下りた瞬間の空気が全然違う。東京で背伸びをして、肩肘を張っているのが解き放たれる感じ。肺まで空気を吸っていると牛の糞の香りまで吸っちゃうとか、一面の山を見ると感動する」と古里への思いを語る。

 番組は札幌近郊を中心に全道各地でロケを行い、地元で評判の店や話題の店を紹介する。「新型コロナウイルス禍に番組が始まり、マスクをつけてロケをしていましたが、今は話を聞きやすくなった。東京の人たちからも最近はおすすめのお店を聞かれるようになりました。長く続けていければ」と語る。

 ゆくゆくは、道内で子ども食堂のような事業をしたいとも考えている。「母子家庭で、私のために母がたくさん働いてくれた。でも、母が用意してくれたご飯を一人で食べるのがすごく寂しかった。子どもたちが誰かとご飯を食べられるようなところをつくりたい」。丸山さんの活動は保健室の先生を目指したころと同じ。「人に寄り添う」ことが原点になっている。

丸山礼(まるやま・れい)

 1997年北見市生まれ。ワタナベエンターテインメント所属。北海道文化放送(UHB)「いっとこ! みんテレ」にレギュラー出演するほか、フジテレビ「新しいカギ」やTBS「王様のブランチ」などでも活躍する。YouTube「丸山礼チャンネル」が人気。特技は、モノマネ・歌・チアダンス・水泳。

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