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世界一周旅行で「二重価格」を体験 30代社長が感じた観光地の変化

毎日新聞 / 2024年8月20日 12時5分

世界一周旅行をしたMATCHA社長の青木優さん=大阪市中央区で2024年7月12日、小坂剛志撮影

 インバウンド(訪日客)向けビジネスを展開するスタートアップ企業の社長が、部下から背中を押されて世界一周旅行に出かけた。自身が外国人旅行者の立場になって直面したのは、観光客の支払いを高く設定する二重価格が浸透している実態だった。

 青木優(ゆう)さん(35)は、学生時代に世界一周をした経験も踏まえ「日本文化を世界に伝えたい」と2013年に起業。訪日客向け観光情報を伝えるウェブメディアを運営するMATCHA(マッチャ、東京)を設立した。

 従業員数は50人に拡大。英語や中国語など10言語で情報を発信するようになり、星野リゾートから出資を受けるまでに成長した。

 ただ、23年末から「いろいろあって、自分のエネルギー量が落ちている」と感じていた。それに気付いた役員の一人が「1カ月、旅に行ってください」と提案。「海外では1カ月以上の休暇をとって旅行をしている。こんなチャンスは二度とないかもしれない」と思い、旅に出た。

 6月4日から7月6日にかけ、シンガポールからインド、フランス、スペイン、アメリカなど8カ国を回った。費用の総額は世界一周航空券や宿泊、食事の費用などで約430万円。宿泊費は1泊2万~4万円が多かった。

 インドのホテルでは、客室のデジタルサイネージ(電子掲示板)に向かって着用した服を洗ってもらう方法を質問すると、AI(人工知能)で対応可能な時間を回答。「人件費の抑制にもなる。日本のホテルもデジタル化を進めるべきだ」と感じた。

 世界でショックを受けたのは、食事やサービスの日本との価格差だった。

 旅行中は1ドルが150円台の後半で推移する円安の期間とも重なった。米西部ラスベガスのコーヒーショップでは、コーヒーとバナナだけで約1500円を支払った。米南部フロリダ州にあるディズニーのテーマパークでは、1日入場料が約3万円に。日本にあるテーマパークの約3倍にも及ぶ。

 スイスや米国では二重価格も体験した。シンガポールの有名植物園でも、自国民より高い入場料を外国人向けに設定していたという。「地域に根ざした美術館や神社仏閣、レジャー施設では当たり前になっていた」と振り返る。

 日本国内でも二重価格を巡る議論が起こり始めており、観光業界には慎重な声もある。青木さんが旅をして考えたのは「施設の入場料収入が増えれば、将来の投資にもつながる。日本でも試行しながら検証すればよいのでは」。世界一周旅行は、日本の観光産業の方向性を考える貴重な体験にもなった。

 青木さんは9月19日、観光関連の会議「インバウンドサミット2024」に登壇する。東京都内で開かれ、オンラインでも聴講できる。【小坂剛志】

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