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入山規制始まった富士山 記者が見た登山客の変化と今後の課題

毎日新聞 / 2024年8月21日 7時30分

富士山吉田ルートの山頂で日の出を望む登山者たち=2024年8月4日午前4時49分、野田樹撮影

 富士山の山梨県側登山道「吉田ルート」で、7月に始まった入山規制。夜通し登る「弾丸登山」や山頂付近の混雑を抑制するために県が実施したが、登山客に変化はあったのか。8月最初の週末、山小屋に宿泊して山頂でご来光(日の出)を見る人気の行程を歩いた。

 3日土曜の午前11時過ぎ、ふもとの富士山パーキング(県立富士北麓駐車場)から出ているシャトルバスを利用して5合目に着いた。通行料を支払い、県が設置した規制ゲートを通過して登山道に入った。

 県は、1日の登山者の上限を4000人とし、午後4時~午前3時はゲートを閉鎖して下山者と山小屋宿泊者以外の通行を制限。2000円の通行料も義務化した。

 8合目(標高3100メートル)の山小屋「太子舘」に着いたのは、午後2時半ごろ。快晴で風も弱く、気温は15度だった。太子舘周辺の登山道は規制前、弾丸登山の休憩地として混雑した。規制が始まった後も、7月の連休には、ブルーシートなどにくるまって野宿する登山者がみられたという。

 山小屋で仮眠し、午後8時ごろから周辺を取材した。太子舘前にはベンチがあり、10人ほどがかわるがわる座っていた。外国人が目立ち、ゲートを閉鎖直前に通過したと思われる登山者も数組いたが、閑散としている。太子舘のスタッフも「今日はいつもより少ない」と教えてくれた。

 午後10時ごろ、日本人登山者も目に付くようになった。東京都の会社員、福井健太さん(44)は、7合目の山小屋に友人と宿泊し、山頂での日の出を目指して登ってきた。2022年に初めて登った時は登山道が大混雑したため、早めに出発した。「とてもすいていて驚いた。2年前は登山者が登山道ではないところを登ったりしていて危険だった」と振り返った。

 富士吉田市によると、午後5時~午前3時に6合目を通過する登山者は7月の1カ月間で前年比約4分の1に減少。夜間のゲート閉鎖のほか、閉鎖直前に入山しようとする登山者に対し、県が山小屋への宿泊を呼びかけていることなどが奏功しているようだ。別の山小屋関係者も「夜は本当に静か。安眠できる」と笑っていた。

 4日午前0時過ぎ、山頂でのご来光を目指して8合目を出発した。気温は12度。星空が広がって風もない。最初はスムーズに登れたが、午前2時ごろ、静岡県側登山道「須走ルート」と合流する本8合目(標高3400メートル)で登山者の列に捕まった。

 歩いては止まってを繰り返し、通常80分ほどで着くはずの山頂が遠い。日の出は午前4時45分ごろだ。間に合うか不安に思っていると、後方の女性ツアーガイドが「こんなに天気が良いのは珍しい。渋滞も富士登山だと思って楽しみましょう」と呼びかけているのが聞こえた。確かに体の冷えは感じない。ただ、悪天候で十分な備えがなければ、渋滞に耐えるのは難しそうだ。

 午前4時半ごろ、ようやくたどり着いた山頂は登山者でごった返していた。まもなく日が昇ると歓声が上がった。友人と初めて登った大学4年の佐光凜星さん(21)は「雲海の中から日が昇ってきれいだった。太陽の動きが速く感じた」と興奮気味に話した。

 一方、20代の男性は「山頂まで時間がかかった。規制(の意味)って何なんだろう」と漏らした。

 この日は、野宿者には出会わず、夜間にゲートを閉鎖する効果は実感した。ただ、夜明け前の山頂付近の渋滞はひどく、入山の上限人数は議論の余地がありそうだ。

 県富士山保全・観光エコシステム推進グループの岩間勝宏推進監は「山小屋の宿泊者が同じ時間帯に山頂を目指すと、どうしても渋滞が起きてしまう。今後の検討課題だ」と話す。

 県によると、3日は2924人に通行を許可(予約のみで入山しなかった人を含む)。7月1日~8月18日までで、5番目に多い人数だった。【野田樹】

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