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ドローン国家資格化で受講者急増 それでも事業化が「難しい」事情

毎日新聞 / 2024年8月22日 10時30分

 上空からの状況確認など、災害時に欠かせなくなったドローン(無人航空機)の新たな活用に期待が集まっている。2022年12月に国家資格化されたことで技能訓練校の受講者が急増し、過疎地の輸送手段として模索する自治体も増えている。人手不足が目立つドライバーの“代役”など、今後の用途拡大が注目される。

 「飛行経路を確認しながら、丸い枠の中に着陸させてください」。6月中旬、ドローン技能訓練校「空力計画」(奈良市中山町)が実施した講習の一場面だ。機体を直接目で見ずに飛ばす「目視外飛行」を実習した。京都府宮津市の無職男性(71)は、操縦装置のディスプレーに映し出される飛行の様子を見ながら、機体を枠内に収め、ほっと息をついた。

 男性は既に1等操縦士の資格を持つが、技能の幅を広げるために受講したという。「操縦が好きなので趣味の延長ではあるが、災害時などに役立つ場面が来るかもしれず、今のうちに技能を磨いておきたい」と話した。

 空力計画では23年の受講者は前年の3倍を超えるほど活況。24年に入ってからは落ち着いたものの、22年以前と比べると高い水準を維持している。

 大きな理由の一つが、国家資格の「利便性」だ。安藤孝治社長によると「国家資格保有者は民間の技能認証より各種申請が簡略化されるため、手間を大幅に減らせる利点を求めて資格取得を希望する人が全国的に増えた」という。

 ドローンの国家資格は1等、2等の各操縦士。資格化される前の民間の「技能認証」でも現在の2等操縦士と同等の操作ができたが、飛行の度に国土交通省への申請が必要になるなど手間が多いのが課題だった。

 受講者数を押し上げている背景は他にもある。機体の性能が年々向上し、GPS(全地球測位システム)で事前に飛行範囲やルートを設定する自動飛行が可能になるなど、活用の幅が広がっているのだ。

 既に空撮や測量、ビル点検、農家の薬剤散布などは事業として定着している。さらに、物流の「2024年問題」のドライバー不足を補うため、ドローンを活用する動きも加速。長崎県の五島列島ではドローンを使って医薬品を運ぶサービスが始まり、6月からは有人地帯で目視せずに飛ばす新たな事業の検討が始まっている。損害保険大手も「ドローン保険」の開発を進めており、商用利用が本格化すると期待される。

 一方で課題も多い。今はまだ「事業に活用できる領域が狭い」うえ、経費負担も大きいのが現状だ。

 奈良市ではこれまで2度、高齢者の割合が高い東部地域で、食料品や医薬品を運ぶ実証実験をドローン関連企業と実施した。目標とした成果は得られたというが、市担当者は「すぐにでも民間企業に事業化してもらいたいが、現状では難しい」と分析。関係者は「採算が取れるビジネスに育てなければならない」と指摘する。【山口起儀】

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