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本でつながる人と街 山形読書会、「自由さ」支持され100回目

毎日新聞 / 2024年8月23日 14時0分

自分のお気に入りの本を紹介する参加者。左から3人目は寺崎江里さん=山形市で2024年7月20日、竹内幹撮影

 大学を卒業後、盛岡市で働いていた寺崎江里さん(39)が出身地の山形市に戻ったのは2013年。大学進学で離れてからおよそ10年。「人も街も分からなかった」という地元で作りたかったのは、好きな本を互いに紹介し、自由に語らう場所だった。【竹内幹】

 帰郷後、11年間にわたって定期的に開催を続ける「山形読書会」は今年7月、100回目を迎えた。会員制でなく、自由参加のスタイルながらも根強く支持を集めている。

 山形市内のカフェで開かれた節目の読書会には山形県内外から20人が参加。普段はテーマを設けないが、この日は参加者がそれぞれ「元気をくれる本」2冊を紹介し、互いに語りあった。

 初めて参加したという山形県大石田町の織江尚史さん(58)は「絶望の中から登場人物が希望を求め、もがいている」と評する2冊、コーマック・マッカーシーの小説「ザ・ロード」と井上ひさしの戯曲「父と暮せば」を取り上げた。

 「本との出会いはどこか人間関係と似ている。波長が合ったり、影響を受けたり、逆に嫌いになったり。皆さんから熱のこもった話を聞くことは刺激があり、楽しかった」と振り返る。

    ◇

 山形を出て秋田県の大学を卒業後、盛岡で学習塾の講師として就職した寺崎さん。「夜の仕事なので、知り合いもいなかった。孤独の中、人とのつながりを求めていた」。そんな当時の経験が、活動の原点だ。

 そんな時、SNS(ネット交流サービス)で地元で開催する読書会の存在を知り、参加した。人との出会いから盛岡の街の魅力を知り、潤いのある生活を送ることができた。

 家族の事情で山形に戻ると、「読書会を通して盛岡のことが好きになったように」、今度は自ら読書会を立ち上げようと思った。

 山形読書会は課題図書もなく、各自、自由に本を持ち寄ってフリートークをするスタイル。地域を知るために、山形市の内外を問わず開催場所も変えている。土日を中心に開催し、これまで中学生から70代まで延べ1000人以上が参加した。

 これまで20回以上参加した山形県庄内町の阿部和恵さん(52)は「ここは幅広い年代と多様な人たちが集まり、気軽に参加できた。開催場所も固定しないので、新しい発見がある」と魅力を話す。

 阿部さんは100回目の読書会にも駆けつけ、お気に入りのヴォーンダ・ミショー・ネルソンのドキュメンタリー・ノベル「ハーレムの闘う本屋 ルイス・ミショーの生涯」と石塚真一のコミック「BLUE GIANT(ブルージャイアント)」を紹介。「自分の好きなものを見つけ、それに向かって突き進むことが幸せであり、元気を与えてくれる」と語りかけた。

 次回は9月28日、庭園を望む山形市の文化学習施設「洗心庵」で読書会の開催を予定している。寺崎さんは「参加者の中から各地域で新しい読書会を立ち上げる人もいる。これからも続け、本を通して人と街をつなぐ場を広げていきたい」と意気込む。

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