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「返金したい」手口巧妙に ネットショッピング詐欺の被害相次ぐ

毎日新聞 / 2024年8月27日 15時32分

被害者が時計を注文し、その後商品が届かなかった通販サイト。振込先の個人名口座はその後金融機関によって凍結された

 「値段の安さにつられてそのまま注文し、指示されるままにATM(現金自動受払機)で振り込んでしまった」。秋田市に住む40代男性はこう悔やむ。

 インターネットショッピングで靴や時計、化粧品などを安く買おうと注文したものの、商品が届かずに料金をだまし取られる「ネットショッピング詐欺」の被害が後を絶たない。警察もサイトの運営者までたどり着くことが難しいうえ、個人の商品契約という事情から本格捜査に着手しづらく、被害の手口や金額が表に出にくいことも一因だ。

 行政の相談窓口は「人口減少が進み、町の店が減っていくとネット通販への依存が大きくなりやすい。過度な値引きや不自然な文章表現などには特に注意が必要」と呼びかけている。

 どのようにして被害に遭ったのか。インターネットで検索していた男性は、通常は3万円近い外国メーカーの腕時計が半値近い約1万7000円で売られているのを見つけた。しかし「アマゾン」や「楽天」といった大手通販サイトではなく、個人運営のような見慣れないサイトだった。

 ネット通販では個人同士の売買は珍しくないため「個人輸入をしたりすればコストが下がって安くなるのだろう」と思い込み、信用してしまった。サイトで注文したところ、直後に「岩崎」を名乗る個人から返信が届き、別の名前の個人口座に料金を支払うよう指示された。

 振り込んだ後、その旨を通知したが商品はしばらく届かず、不審に思っていたところ「現在欠品しており、キャンセルして返品したい」「次の公式LINEで問い合わせてほしい」と返信があった。

 LINEを通じて問い合わせると、さらに別の名前を名乗る人物から、支払伝票の画像を送るよう依頼された。相手に何者かを尋ねても「住所は日本」「当社は返金処理のみを担当する」といったあいまいな返信だった。

 男性はその後、金融機関に相談したところ、直後に「その口座は凍結しました」と通知を受けた。もし口座に残金があれば被害者の人数に応じて分割して返済すると金融機関から説明を受けたが、その後の連絡はない。口座の残金は既に引き出されたとみられる。

 数日すると男性のもとに「料金を返金したい」という趣旨の電話がかかってきた。相手はたどたどしい日本語で、アジア系の外国人とみられる口調だった。男性が「どこの出身か」と尋ねると「台湾」と返答したが、真偽は不明だ。

 秋田県警の捜査員によると、こうした偽サイトを使った被害は「ネットショッピング詐欺」の一つで、連日各署に相談が寄せられている。「手口が巧妙化し、商品代金をだまし取るだけでなく、『返金したい』と言ってさらに口座の番号を聞き出そうとし、スマートフォンの決済アプリを通じて二度三度と支払わせるように仕向けてくる」という。

 しかし商品の額は10万円を下回ることが多く、「こうした被害は特殊詐欺とも位置づけづらく、警察からは個別に広報しづらい」という。「借金を抱えた者が犯罪者に売り渡した口座などが振込先になりやすく、個人や外国人名義の口座に振り込む際は注意が必要」と指摘する。

 消費者の相談に応じている秋田県生活センターの担当者によると、こうした被害は2018年ごろから寄せられるようになり、23年度には60件に上り、収まる兆しが見られない。

 「これまでには化粧品や古着、Tシャツ、スポーツシューズ、健康食品、サプリ、美容オイル、ルアーなどを買おうとしてだまされた人もいる。物価高による節約志向の強まりで『1円でも安く買いたい』という消費者の心理につけこんだ巧妙な手口」と担当者は指摘する。

 さらに「人口減少によって欲しい商品が直接買える店舗が減り、今後地方ではネット通販を利用する人が増えていく可能性がある」とし、トラブルが疑われる際には消費者ホットライン(188)への相談を呼びかけている。

注意が必要なインターネット通販サイトの一例

 ▽販売価格が大幅に値引きされているもの

 ▽サイト内のリンクが適切に機能しない

 ▽「特定商取引法に基づく表示」が不十分なもの

 ▽URLや日本語の字体、文章表現などが不自然なもの

 ▽事業者の住所が記載されていない、または虚偽の可能性があるもの

 ▽連絡方法が問い合わせフォームやフリーメールに限定されている

 ※国民生活センターの資料などに基づく

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