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法整備求める判決、弁護団「画期的」 無罪男性のDNA抹消請求

毎日新聞 / 2024年8月30日 20時53分

「勝訴」の紙を掲げる奥田恭正さん(右から2人目)=名古屋市中区で2024年8月30日午後3時18分、塚本紘平撮影

 無罪判決が確定した男性のDNA型や指紋などのデータを警察庁がデータベースで保管し続けることの是非が争われた訴訟は、名古屋高裁が30日、1審同様に抹消を命じた。個人の尊厳を定めた憲法13条に言及し「原告の人格権を侵害している」と違憲性にまで踏み込んだ判決に、弁護団は「大変価値ある画期的な判断」と評価し、原告の男性は涙を浮かべて「勝訴」の旗を掲げた。

第1回公判から8年

 原告の名古屋市の薬剤師、奥田恭正さん(67)は判決後に記者会見。声をつまらせながら「2016年の(刑事裁判)第1回公判から8年。こんな結果が出てうれしい」と喜びを表した。

 奥田さんは16年10月、マンション建設反対運動中に現場監督に暴行したとして愛知県警に現行犯逮捕され、DNA型などを採取された。名古屋地裁は18年2月、「(現場監督の)証言を全面的に信用できない」と無罪を言い渡し、確定した。

 奥田さんは無罪確定後も保管されているDNA型などのデータの抹消を求めて提訴。22年の名古屋地裁判決は保管を続ける条件として「余罪や再犯の恐れなどの具体的な必要性」を挙げ、奥田さんのケースはそれが認められないとしてデータベースからの抹消を命じた。

データベース運用の立法化求める

 高裁判決では、奥田さんが逮捕されたケースでのDNA型採取を「必要があるとは考えられない」と指摘。その上で、ほとんど限定されずに警察が捜査目的にDNA型を採取、保管している現状を踏まえ「憲法の趣旨に沿った立法による整備が強く望まれる」と踏み込んだ。

 究極の個人情報でもあるDNA型などの管理・運用を巡っては諸外国で法整備が進む。ドイツでは保管するデータを重大犯罪に関わった人などに限定している。一方、日本では法律がなく、国家公安委員会の規則や警察庁の通達に基づき運用している。

 原告弁護団の国田武二郎団長は法整備を求めた判決について「判決が確定すれば国や警察庁、法務省を動かすかもしれない」と期待感を示した。

被害者の証言は「虚偽」と認定

 判決では、奥田さんから暴行を受けたと申告していた建設会社の現場監督の証言を虚偽とした上で、現場監督と会社に計220万円の損害賠償の支払いを命じた。その一方、奥田さんが求めていた国や県の賠償責任については「検察が捜査段階で虚偽の供述を見破ったりすることは通常の検察官の能力として困難だった」など奥田さんの請求を棄却した。

 元検察官でもある国田団長は「逮捕、起訴までした警察や検察官にも大きな過失責任があり国家賠償を認めるべきだ。私も20年検事として捜査現場にいたが、被害者の言っていることが本当かどうか精査するのが検察官の役割。起訴されることは容疑者の人生を大きく左右する」と語った。

 奥田さんは「難しいと思っていた建設会社と社員に対する損害賠償が認められてうれしい」としつつ、国や県への賠償が認められなかったことについて「弁護団と話して上告するか検討したい」と述べた。【川瀬慎一朗、道下寛子】

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