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小樽市総合博物館が協会賞 全国1200館から選ばれた理由とは

毎日新聞 / 2024年9月7日 5時0分

小樽運河沿いにある小樽市総合博物館の運河館=北海道小樽市で2024年6月5日午後1時36分、今井美津子撮影

 優れた取り組みを行う美術館や博物館を顕彰する「日本博物館協会賞」(同協会主催)という賞がある。5回目となった今年、全国約1200館から受賞したのは小樽市総合博物館(北海道)だった。全国的な知名度がない小規模な地方博物館だが、小樽の歴史資産を生かすさまざまな取り組みを地域のアドバイザーとして支えてきたことが評価された。

 同賞は2020年に創設。日本初の本格的西洋美術館である大原美術館(岡山県)や、絵本作家・いわさきちひろの原画などを展示するちひろ美術館(東京都、長野県)などが受賞している。

 「歴史と自然へのニーズが高い小樽で、地域の情報をこまめに発信してきたことが成果につながったのかもしれません」。受賞を受け、石川直章館長がこう切り出した。

 年間800万人の観光客が訪れる小樽市は歴史的景観が「売り」だ。観光関係者や地元企業が歴史をPRする際、多くのケースで同博物館が史実を監修する。「依頼は基本的に断らない」(石川館長)がモットーだ。

 歴史的建造物「旧小樽倉庫」内で、博物館の運河館と軒を連ねる雑貨店「UNGA↑(ぷらす)」との関係もその一つ。

 同店は地元にちなんだ商品の開発・販売を手がけており、店内には旧小樽倉庫の屋根瓦をイメージした菓子などが並ぶ。オリジナル商品には歴史的背景を説明するカードが添付され、史実確認は博物館の担当だ。

 一方で同博物館は、家具販売大手「ニトリ」が17年に開設した美術館群「小樽芸術村」にも助言を送る。芸術村が一般開放する国指定重要文化財「旧三井銀行小樽支店」内には、博物館が製作した銀行の歴史を解説するパネルなどが展示されている。

 日本博物館協会はこうした取り組みについて「地域のアイデンティティーを確立した都市再生が博物館活動とともに進んでいる好事例」と称賛した。

 だが、地域に根ざした活動は、観光分野での助言や監修だけにとどまらない。

 同博物館には歴史や自然、鉄道などの8分野に約60人のボランティアが登録。関心のある分野の学芸員とともに、地域の歴史を伝える資料の翻刻などに取り組む。

 年間を通じて開催する「ジュニア科学講座」は開講61年を迎え、地元の子供たちの探究心を育んでいる。

 「市内外の皆さんが博物館をうまく使ってくれたからこその受賞」と石川館長。地域密着の運営に活路を見いだし、今や地元になくてはならない存在となっている。【今井美津子】

小樽市総合博物館

 市内に点在していた小樽市博物館、青少年科学技術館、小樽交通記念館を統合・再編し、2007年に開館した。鉄道展示室や科学展示室がある本館と、地域の歴史や自然を紹介する運河館の2施設がある。23年度の入館者数は計12万9590人。

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