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戦争、でもそこには人間の営みが… 劇団ヒトハダ「旅芸人の記録」

毎日新聞 / 2024年9月4日 10時30分

劇団「ヒトハダ」公演で、「旅芸人の記録」の脚本・演出を手がける鄭義信=濱田元子撮影

 演劇ファンなら誰もがうなるような顔ぶれがそろう。劇団「ヒトハダ」。その名前が示すように、2022年4~5月の旗揚げ公演「僕は歌う、青空とコーラと君のために」は時代に翻弄(ほんろう)される中での人と人とのつながりが胸を打った。

 それから約2年半、満を持しての第2回公演「旅芸人の記録」は、大衆演劇の一座が舞台となる。旗揚げ公演に引き続き、鄭義信が脚本・演出を手掛ける。

 前回は朝鮮戦争が背景にあった。今回は第二次大戦中という設定だ。「前回は稽古(けいこ)を始めて1週間したところでロシアのウクライナ侵攻が始まった。『期せずして戦争が始まったね』という感じだったのに、2年半たってまだ戦争が終わっていない。戦争って書き続けなきゃいけないなって思っています」と語る。

 舞台は関西の地方都市にある小さな大衆演劇の劇場。女剣劇を看板にする二見劇団が十八番の「ヤクザ忠臣蔵」を上演している。だが、役者は徴兵され、台本は検閲される……。庶民の娯楽にも戦争が影を落とす。

 そもそも「ヒトハダ」は、鄭が作・演出した「赤道の下のマクベス」(新国立劇場)で共演した浅野雅博と尾上寛之が、鄭に作品を依頼したことがきっかけ。櫻井章喜、梅沢昌代、大鶴佐助も加わることになり「劇団」になったという。

 「今回、大衆演劇のことをやりたいって言ったら、寛之が出たことあるってなった。紹介してもらって、十条の篠原演芸場(東京都北区)に行きました」。そこから話が進んで、今年4月には東京・浅草の木馬館での「一見劇団」の公演で、もともとあった大衆演劇のネタに手を加えて1本演出した。

 「旅から旅へ、いまも舞台の上で食事をしたり、布団を敷いて寝たりしている。生活の中に芝居がある人たちだなという感じがしました」。今回の本にもそんな感覚と体験が息づいている。

 「ヒトハダ」はこういうテーマでいく、という明確なものはないという。「前回、歌ったり、踊ったりしたので、今回もそういうシーンは入れようかなと思っています。(座長の)佐助は、今度は野外劇をやるぞって言っていますが、それぞれ夢があるから。飲み屋で話しながら決まります(笑い)」

 鄭の代表作の一つである「焼肉ドラゴン」しかり、今回も故郷・姫路の記憶が作品にちりばめられている。「笑って泣いていただいて、大衆演劇の面白さも感じていただいて、戦争っていうのも感じていただいて、と例によって盛りだくさんです。『戦争反対』を声高に言うんじゃなくて、家族を通じて、戦争があって、それでもそこには人間の営みがあってっていうのを感じてもらえればいいかな」

 9月5~22日に東京・下北沢のザ・スズナリ、同26~29日に大阪・扇町ミュージアムキューブCUBE01。【濱田元子】

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