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「疲れすぎて眠れない」は本当? 製薬会社がノーベル賞候補と研究へ

毎日新聞 / 2024年9月4日 6時0分

アリナミン製薬との共同研究について発表する柳沢正史さん(右)と、同社の森澤篤社長=東京都千代田区で2024年9月3日、中嶋真希撮影

 適度に疲れるとよく眠れるのに、疲れすぎると眠れないのはなぜ?

 アリナミン製薬(東京都千代田区)は3日、消費者から届いたそんな疑問に答えるべく、ノーベル生理学・医学賞候補に挙げられる睡眠学者、柳沢正史さん(64)らと共同研究に乗り出すと発表した。

 記者発表会に出席した柳沢さんによると、「疲労と睡眠の関係は、まだ解明されていない壮大なテーマ」だという。

 疲れすぎると眠れないことが科学的に証明されれば、忙しすぎる日本人に睡眠環境を改善してもらう「シャープなメッセージ」になると柳沢さんは期待する。

疲労と睡眠の関係は未知

 「疲れすぎて、眠れないんです……」

 同社が消費者を対象に毎年実施する対面インタビューやインターネット調査では、こうした声が多数寄せられてきた。

 ビタミン剤「アリナミン」に配合されるビタミンB1誘導体「フルスルチアミン」が疲労回復に役立つことは実験で実証していたが、疲労と睡眠の関係は未知の分野だった。そこで、同社から睡眠学の世界的権威である柳沢さんに共同研究を申し出た。

 柳沢さんは筑波大国際統合睡眠医科学研究機構の機構長で、同機構発のスタートアップ企業「S’UIMIN」の社長も務める。1998年に睡眠と覚醒を制御する神経伝達物質オレキシンを発見し、2019年に文化功労者に選ばれたほか、23年に世界的に優れた科学研究に贈られる「ブレークスルー賞」を受賞した。

 睡眠と疲労の関係は、柳沢さんにとっても研究する価値が高い分野だった。

 「適切な肉体疲労があると睡眠が深くなることはわかっているが、どうしてそうなるのかは、まだわかっていない」

 今回の研究では、まず「肉体的疲労」に着目する。被験者にさまざまな強度で有酸素運動や筋力トレーニングなどをしてもらい、睡眠時の脳波を測定したり血液検査をしたりする。疲労回復効果があるフルスルチアミンが睡眠の質の改善に効果を発揮するかどうかも検証するという。

それでも「量」が大事

 経済協力開発機構(OECD)が21年に行った調査によると、日本人の睡眠時間の長さは加盟33カ国中で最下位だった。柳沢さんは「OECDの調査だけでなく、ほほすべての調査で日本はビリ」と指摘する。

 今回の研究で、フルスルチアミンに睡眠の質を高める効果があることが仮に実証できたとしても、「短い睡眠時間でいい」ということにはならないという。

 「睡眠は、質で量を補えません。講演会などでよく『短い時間で睡眠の質を上げるには?』と聞かれるが、それはできない。量は必須であることを正しく伝えていきたい」

 また、記者発表会に同席したアリナミン製薬の森澤篤社長は、日本人の睡眠時間が短い背景について「頑張って働くことが第一という文化がある。今は、共働きで子育ても忙しい人が多い」と語った。

 これを受け、柳沢さんは「ほとんどの国で、女性のほうが男性より睡眠時間が長いのに、日本は女性のほうが短い」と話し、睡眠時間を確保するには社会的な環境の改善も重要だと訴えた。

 「さだまさしさんの歌(79年発表の「関白宣言」)に『俺より先に寝てはいけない』とあるが、それが今でも残っている。女性が『ワンオペ』になりがちな社会を改善しないといけない。今回、(疲れすぎると眠れないという)疲労と睡眠のメカニズムが科学的に裏付けられれば、(過度に疲れないように仕事量を調整する必要があることなど)社会的にもシャープなメッセージになるのではないか」【中嶋真希】

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