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「住みよい街」武蔵野市の救急医療に危機 閉鎖相次ぎ病床数減

毎日新聞 / 2024年9月7日 6時30分

9月末で休止となる吉祥寺南病院=東京都武蔵野市で、矢野純一撮影

 住みよい街ランキングで毎年、上位を占める東京都武蔵野市の救急医療体制が危機に直面している。2次救急医療機関の吉祥寺南病院(125床)が建物の老朽化のため9月末で診療休止を決めたためだ。同市の救急医療機関は2病院だけとなり、地域の医療体制の弱体化に不安の声が上がっている。

 「現施設での療養環境の維持は困難と判断し、診療の継続を断念せざるを得ないとの結論に至りました」。7月1日、病院のホームページに診療休止のお知らせが掲載された。

 病院関係者によると、6月に病院内で停電が発生。病床エリアには影響がなかったが、電気設備の老朽化が原因だった。同病院の母体の医療法人啓仁会(本部・埼玉県所沢市)は、この建物での運営は困難と判断し、休止を決めたという。

 病院は吉祥寺駅から徒歩で約10分。内科や外科などがあり、入院が必要な救急患者を受け入れる2次救急医療機関として24時間体制で患者を受け入れてきた。また、市の災害拠点連携病院にも指定されていた。

 病院の建物は1970年に建てられ老朽化が進み、耐震基準も満たしていなかった。10年以上前から建て替えが検討され、2016年には近くの病院と共同で新病院建設計画を公表していた。しかし、建設費の高騰や新型コロナウイルスの感染拡大で計画が頓挫。啓仁会は、病院経営を引き継ぐ医療法人を探しているが、具体化していないという。

 病院の買収に携わる医療コンサルタントは「24時間体制で救急医療に携わる病院はスタッフの確保や人件費などの負担が大きく、経営が厳しくなっている。高度成長期に建てられた病院は、老朽化が進み、建て替え時期を迎えているが、建設費が高騰しており、費用の捻出も難しい状況だ」と話す。

 武蔵野市では、この10年で建物の老朽化などで2次救急に携わる2病院が入院機能を閉鎖、災害医療支援病院1件が廃院。吉祥寺南病院も含めると337病床が減少している。現在、2次救急医療機関は103床の武蔵野陽和会病院、命の危険がある患者を受け入れる3次救急医療機関は591床の武蔵野赤十字病院だけとなっている。

 病院の病床数は都道府県が策定する医療計画で、自治体ごとではなく医療圏と呼ばれる地域ごとに、必要とされる基準病床数が決められている。都によると、武蔵野市は近隣5市からなる北多摩南部医療圏に属しており、同医療圏の基準病床数は7512とされている。4月1日時点の既存の病床数は6946床で、吉祥寺南病院の休止で、さらに基準病床数を下回る。

 近くに住む女性(72)は「次々と救急病院が閉まるので、家族に何かあったとき、心配だ」と話す。市の救急医療体制に詳しい川名ゆうじ市議も「吉祥寺エリアでは2次救急の病院がなくなり、災害時も含め影響が大きい。住みよい街と言われていたが、市のイメージにも関わる」という。

 市の担当者は「吉祥寺南病院は3次救急の武蔵野赤十字病院から、症状が安定した患者を受け入れており、3次救急へのしわ寄せも懸念される。病院経営や病院の売却交渉などは民間の話なので市の役割にも限界がある」と話す。【矢野純一】

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