「心の痛みとの闘い」遺族が語る20年間 愛知・豊明母子4人殺害
毎日新聞 / 2024年9月10日 6時46分
「こんなに長くかかるとは。言葉にすれば数秒で終わる20年は、私にとっては針を刺すような心の痛みと闘いながらの日々だった」。20年前に最愛の妹とおい、めいを殺害された天海としさん(62)は、報道陣を前にそう悔しさをにじませた。
2004年9月9日、愛知県豊明市の民家が放火され、焼け跡から天海さんの妹・加藤利代さん(当時38歳)と、加藤さんの長男佑基さん(同15歳)、長女里奈さん(同13歳)、次男正悟さん(同9歳)の他殺体が見つかった。天海さんは事件以降、ビラ配りや展示、講演を通じて情報提供を呼びかけ続けてきた。
今月6日、事件の展示の準備のため豊明市役所を訪れた天海さん。飼い始めた犬を抱いて笑顔を見せる4人、地元の祭りの練習に参加する子どもたち、陸上部の大会に出場する佑基さん、幼稚園のタイムカプセルから見つかった正悟さんの手紙と絵――。写真や遺品を前にして、事件前の4人の姿が走馬灯のように頭をよぎった。
「いつも(4人と)一緒だと思っている。特に情報提供を呼びかける時は『力を貸して』と4人に声をかけています」と天海さんは話した。
天海さんと加藤さんは仲の良い姉妹だった。1日何十回とメールや電話で連絡を取り合い、夕飯のおかずから、子どもたちのことまでいつも話をした。子どもたちも慕ってくれていて、将来が楽しみだった。だが、事件が全てを奪った。
20年がたったいまも、時は止まったままだ。妹と子どもたちがもし生きていたらどうしているのか、天海さんは想像がつかないという。だからこそ展示や講演で、4人が生きていたこと、どんなに生きたかったかということを知ってほしい。「自分のような思いをする人が二度と出てほしくない」との思いから、誰もが被害者遺族になりうることも伝えてきた。
一方で、時の流れの無常さも感じる。捜査は進展せず、事件の記憶や関心も薄れつつあるように思う。もどかしさを抱えつつも「(犯人の)逃げ得は絶対に許さない。そのためにも情報提供をお願いしたい」と力を込めた。
事件に関するパネル展は、豊明市役所1階で13日まで開かれている。【田中理知】
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