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福島で「生まれ変わる」 松戸女児殺害事件の遺族が温泉旅館を開業

毎日新聞 / 2024年9月13日 19時5分

福島・岳温泉に旅館「RBホテル」をオープンさせたレェ・アイン・ハオさん=福島県二本松市で2024年9月10日午後2時44分、松本ゆう雅撮影

 千葉県松戸市で2017年に殺害されたベトナム国籍のレェ・ティ・ニャット・リンさん(当時9歳)の遺族が今月、福島県二本松市に温泉旅館「RBホテル」を開業した。屋号の「RB」はREBIRTH(生まれ変わる)の意味。リンさんに「もう一度生きてほしい」との願いが込められている。

 福島県中通り地方の岳(だけ)温泉。安達太良山を望む温泉街の一角に、RBホテルはある。廃業した旅館を改装した木造一部2階建てで、客室は20室ほど。天然温泉を引いた大浴場と露天風呂が自慢だ。1階にはベトナム料理店「ハオグエンショップ」もある。

 温泉旅館と料理店を営むのは、リンさんの父レェ・アイン・ハオさん(42)。千葉県から移住した。東日本大震災と原発事故で大きな被害を受けた福島に、自分たちの境遇と重なるところがあるという。「何も悪いことをしていないのに……大切なものを失った」

 IT技術者だったハオさんは仕事の関係で2007年に単身来日。リンさんが2歳の頃、日本の小学校に通わせようと家族を呼び寄せた。そして17年3月24日に事件は起きた。

 小学3年だったリンさんは登校中に連れ去られ、2日後、用水路脇で遺体が見つかった。殺人や強制わいせつ致死などの罪に問われたのは、通っていた小学校の元保護者会長の男性。ハオさんは100万筆を超える署名とともに「極刑」を訴えたが、無期懲役の判決が確定した。リンさんを失った悲しみに見合うとは思えなかった。

 事件後、ベトナムに帰国しようとも考えたが、日本にとどまった。「日本の友達にベトナム料理を食べさせてあげたい」と話していたリンさんの思いを受け継ぐためだった。母グエン・ティ・グエンさん(38)と一緒にベトナムの家庭料理を楽しそうに作る姿は、今も忘れられない。

 ハオさんは21年に松戸市でベトナム料理店を開業した。ただ、新型コロナウイルス禍で経営が難しくなり、心機一転を図ろうと考えていた時に偶然、岳温泉の旅館が売りに出されていることを知った。一家5人での移住を決めた。

 温泉旅館よりもひと足早い23年6月に、ベトナム料理店をオープン。看板メニューの「牛フォー」はリンさんが好んでいた味付けにした。旅館もすぐに開業する計画だったが、必要な許可の取得や資金の工面に時間がかかり、諦めかけたこともあった。今月12日、オープンにこぎ着けた。

 将来はベトナムと日本の懸け橋になりたい――。リンさんは、そんな夢を膨らませていたという。ハオさんはRBホテルが二つの国の交流の場になる日を夢見ている。

 「ベトナムの人たちにも日本の温泉を紹介したい。いつかリンちゃんの友達が泊まりに来てくれたら、うれしいね」

 ホテルの事務室には、笑みをたたえるリンさんの遺影が飾られていた。【松本ゆう雅】

   ◇

 RBホテルの問い合わせは電話(0243・24・8712)またはメール(Book@rbhotel.jp)へ。

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