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関東の人「満月ポン」知ってる? 著名人も♡関西人熱愛の「名月」

毎日新聞 / 2024年9月16日 9時0分

満月ポン=大阪市北区で2024年9月10日、梅田麻衣子撮影

 17日は中秋の名月。月の名前がついたお菓子はいろいろあるけれど、関西の人にとって外せないのは「満月ポン」だ。関東など他地域ではなじみが薄いかもしれないが、パリッと軽い食感のしょうゆ味のせんべいで、多くの人に愛されている。関西人熱愛の駄菓子に迫りたい。

 満月ポンは直径6センチ程度で、小麦粉で作られている。少し厚みがあるせんべいだが、それほど硬くなく、子どもやお年寄りでも食べやすい。一つ一つ味の濃さが違い、後を引くしょうゆ味でついつい食べ進めてしまう。

 作っているのは松岡製菓(大阪市住之江区)。下町の住宅街にある会社を訪ねて、まずびっくりするのが普通の民家のような見た目だ。3代目の松岡清徳社長は「よく言われます。ここは事務所で、裏に工場があります」とにっこり笑う。

 元々は「清水製菓」といい、父親で2代目の力王丸会長がおじと始めた。戦後間もないころからどんぐりアメを作っていたが、近所にあった紡績工場の移転で、需要が減ってしまう。そんな時に取引先から提案されたのが「ポンせん」という小麦粉のおせんべい。当時の大阪では駄菓子屋さんの店先で一枚一枚焼いて売られており、松岡製菓の近辺だけでも20軒程度がポンせんを扱っていたという。塩水で溶いた小麦粉を型に入れて圧力をかけ、膨らませる製法で、神奈川県の大学の学生が開発したという。

 1958年から製造を始め、ポンせんの量産化にも初めて成功した。一斗缶に入れて大阪の菓子問屋が集まる松屋町に卸し、駄菓子屋さんなどで販売された。やがて、スーパーマーケットなどで取り扱えないかと声がかかり、袋に詰めて販売することに。大きさもそれまでの直径11センチ程度から、小ぶりの6センチにして「満月ポン」という商品名で売り出した。

 でも、何で満月? 「ちょうどアポロが月に行ったころ(69年)で、よく満月がクローズアップされてたんです。ちょうど満月に似ているポンせんだから『満月ポン』。クレーターもありますし(笑い)」と松岡社長が教えてくれた。おお、歴史的偉業が由来とは!

 昔ながらの手作業の工程が多くても、1日約40万枚を製造する。ふくらし粉は使わず、型に流し込んだ生地に熱と圧力をかけ、水蒸気の力で膨らませる。満月ポンの表面をよく見ると、型から取り出す時についた小さな穴があるのがわかる。原料の小麦粉は岡山や奈良など産地の異なる6種類をブレンドする。しょうゆも5種類を混ぜることで、味に深みとこくを出す。

 気温や湿度によって、生地の練り方などを調整するという。「同じ機械を使(つこ)うても、(担当する)人が変わったら焼き上がりが違いますね」と松岡社長は明かす。ドブ漬けにすると味が濃くなりすぎるので、しょうゆは霧状にして吹き付ける。だから、味の濃いのと薄いのがあるんですね。

 11月で86歳になる会長も現役だ。「いつも午後3時か4時に出勤して、(満月ポンを)焼いています。『体を動かしている方が調子が良い』って言いますね」と松岡社長は笑う。パッケージの製造者の欄には、会社の住所などとともに「松岡力王丸」の名が記載されており、何だか力強い。

 販売先の約6割は関西だが、80年代の漫才ブーム以降は、関東でも少しずつ知られるようになった。今は海外にも輸出されている。2021年には、米大リーグで活躍する大阪出身の前田健太投手が「アメリカで懐かしいお菓子見つけました。子供の頃めっちゃ食べた!」などと、写真と一緒にX(当時はツイッター)に投稿し、話題になった。ビーガン(完全菜食主義)にも対応しており「ポンせんの可能性を広げたい。日本だけでなく、世界に広げていきたいですね」と松岡社長は話す。

 不ぞろいなことすらも人気の理由で「濃いのん(もの)はお父さんが食べて、薄いのんは奥さんや子どもが食べて……とか聞きますね」とも。本社とオンラインショップでは、正規品にならない不ぞろいの「ぷっしゅん満月ポン」も数量限定で販売している。ひしゃげているものもあるが、それがさまざまな食感を生み出していて楽しい。かたちは「満月」ではなくても、それぞれ味わい深いですね。

 今年の中秋の名月は満月にならないという。まん丸でも欠けていても、美しい月に出合えれば、思いがけずうれしくなる。スマートフォンをときどき確認しながら、急ぎ足で家路につく日々だけど、たまには夜空を見上げてみよう。

知名度アップ、立役者にあの人

 知名度アップに一役買ってくれたのが、歌手の故やしきたかじんさん。30年ほど前、ラジオ番組で満月ポンについて話すと、売り上げは3倍に跳ね上がった。しょうゆが多めにかかったものばかりを選んで食べていたそうで、テレビやラジオの番組を通じて「もっとしょうゆ塗って」と熱烈にアピールした。

 これをきっかけに、しょうゆを通常の1・5倍使う「濃い~味 満月ポン」が誕生した。今ではオリジナルと2本柱の人気商品に成長した。通常はしょうゆを11秒間吹き付けるところ、16秒間に延ばして、濃い味に仕上げている。

 他にも「黒みつしょう油味」や塩味もある。オンラインショップでは、ぷっしゅんのほか、ハーブを使ったおしゃれな「POMクラッカー」、チョコを染みこませた「チョコ満月ポン」(期間限定で発売は10月11日から)も扱っている。【水津聡子】

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