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“一人っ子=わがまま”じゃない 強み生かせる親子関係の鍵は?

毎日新聞 / 2024年9月18日 5時1分

幼児の心理を研究している龍谷大の東山薫准教授=京都市伏見区で2024年8月8日午後4時12分、前本麻有撮影

 「一人っ子はわがまま」「きょうだいがいないと甘えん坊になる」という意見を耳にすることがあるが、それは本当なのか。幼児の心理を研究している龍谷大の東山(とうやま)薫准教授(発達心理学)に聞いた。

     ◇

きょうだいの有無、関係なく

 一人っ子かどうかが性格に影響するのかについてですが、きょうだいの有無で性格が決まるわけではありません。心理学では、他者の気持ちや視点に立つことができる力を測る「心の理論課題」という発達検査があります。その検査結果の分析研究では、きょうだいの有無による差はないとの結果が出ています。

 個人の性格の差は、きょうだいがいるかどうかではなく、どんな経験を積むかや親との関わり方の違いによって生じるとされています。一人っ子がどんな性格かについて考えることは、血液型による性格の話題と似ていると感じます。周囲に「私、×型だから、○○が苦手なの」と自分から寄せていってしまう人もいると思いますが、A、B、O、AB型のたった4分類で人間の性格が判断できたら私の研究している「心理学」なんて不要になってしまいます。「一人っ子だから○○」と言うのは決めつけや思い込みに過ぎません。

言ってはならない言葉

 世間では「一人っ子はかわいそう」と言われるケースもあるようですが、決して言ってはならない言葉であり、本人にそう思わせてはいけません。言われた方はどれだけ傷つくことでしょう。生まれもった性別や容姿、そしてきょうだいの有無など本人の努力ではどうにもならないことに対して「かわいそう」とラベリングされることで「私はかわいそうなんだ」と思い込んでしまいます。

 もし、子どもから「どうして僕、私にはきょうだいがいないの?」と聞かれたら、回答は難しいですが、そう問われた時は「いろいろなおうち(家庭)がある」と知る機会につなげられるように言葉掛けを工夫したいものです。

 子どもは思っている以上に親の顔色を見て、何かを感じ取っています。親が一人っ子に対してネガティブな感情を持って関わらないようにするのが重要です。

 他者との関わりを経験し、「思いやり」といった心を養うのは、必ずしもきょうだいでなくていいのです。保育園や幼稚園、公園で出会う友達との関係からも多くを学べます。本を読むことは、登場人物の気持ちになったり「こういう生き方があるんだ」と知ったりできるので、おすすめです。

生まれた時から「異なる個人」

 「一人っ子の強み」は、親の愛情を独り占めできることですが、これは親子の関係が良好であることが前提で成り立つものです。親が子どもに関心を寄せない場合はきょうだいがいない分、孤独を感じやすいでしょう。また、親が子どもの気持ちを考えず、自分の気持ちや理想を押しつけてくる場合、一人っ子であるがゆえ、その関係も密になりやすくなり、閉塞(へいそく)感を感じるでしょう。まずは子どもが安心して甘えられて、自己主張できる関係を作ることが大事です。

 一方で、一人っ子に限らず、過保護は良くありません。子どもが傷つかないようにという愛情をもとに親が先回りして子どもを守っているうちに、子どもの意思ではなく親の考えや理想で子どもを縛ることになりかねません。たとえその先回りが子どもの意思に沿っていたとしても、子どもが自分で考える機会を奪うことになり、他者の考えや気持ちを考え、思いやりの心を育む機会が格段に減ってしまいかねません。つまり、親は子どもが生まれた時から「自分とは異なる人格を持った個人」として接することが大切です。【聞き手・前本麻有】

東山薫(とうやま・かおる)

 龍谷大准教授(発達心理学)。聖心女子大大学院で博士号(心理学)取得。幼児が他者の気持ちや視点に立つことができるようになるプロセスを研究している。著書に「『心の理論』の再検討―心の多面性の理解とその発達の関連要因-」(風間書房)などがある。

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