さながら縄文人気分 本物の火焔型土器に触れてみて 新潟の体験施設
毎日新聞 / 2024年9月14日 13時14分
歴史の教科書でもおなじみの「火焔(かえん)型土器」に触れます――。見た目が燃え上がる炎のように見えることからそう名付けられた土器で、日本の縄文時代を代表する。博物館ではガラスケースの中に展示されているのが一般的だが、新潟県津南町の農と縄文の体験実習館「なじょもん」では、発掘された実物に触れることができる。体験してみた。【中津川甫】
県埋蔵文化財センターによると、火焔型土器のレプリカに触れる施設はあるが、実物は他に聞いたことがないという。火焔型土器は縄文中期の約5000年前に生み出されたとされ、ほとんどが県内の信濃川の上・中流域(津南から長岡付近)で発見されている。十日町市博物館には県内唯一の国宝に指定された土器もあり、「新潟の宝」になっている。
なじょもんの窓口で申し込むと、発掘調査の記録作業をしている「整理室」に案内され、職員の立ち会いの下、火焔型土器を持つことができる。入館料は原則無料(有料の企画展開催時は高校生以上300円必要)。現在は町内で約5500年前の遺跡から見つかった火焔型土器のほか、大小さまざまな約30個の土器に触れる。
実際に火焔型土器を手に持つと、大きな米袋を持った時のような重みがあり、思ったよりも艶と厚みがあった。炎のような取っ手を軽くつかんだり、文様を指でなぞったりしていると、縄文人になったような気分を味わえた。自分の物だったら装飾の出来栄えを自慢し他人に譲りたくないが、獲物を追って引っ越す時は重くて持ち運びが大変だと感じた。
担当する町教委の小島裕輔さんは「火焔型土器は研究者だけが触れる物ではなく、みんなの物。見るだけでなく触ることで、縄文時代をもっと身近に感じてほしい」と語る。
十日町市博物館によると、火焔型土器の魅力は不思議なデザインにある。縄文土器なのに表面は縄目の文様が原則使われず、竹管の使用やひも状にした粘土を張り付けて立体的な線で文様(渦巻(うずまき)文やS字文など)を表現するといった特徴がある。口縁部の取っ手は4カ所あり、ニワトリのトサカにも見えるため「鶏頭冠(けいとうかん)突起」と呼ばれる。その周囲にあるフリル状のギザギザ部分はノコギリの歯に似ていることから「鋸歯(きょし)状突起」と名付けられている。
一方で長岡市立科学博物館によると、専門家の中には炎に見える取っ手が「信濃川で跳ねるサケの姿」、土器の文様は「水の流れや雲、煙」と見立てる人もおり、デザインの解釈はさまざまだ。火焔型土器は内面に食べ物の焦げが付着していることが多いため、煮炊きに使われたとみられているが、祭りや儀式など特別な時に用いられたとも考えられている。こうした謎の多さが現代人に縄文ロマンを感じさせるという。
小島さんも「津南のような豪雪地域に、なぜ縄文人が多く住んでいたのか」と強い関心を持つ。農耕でなく狩猟採集で生計を立てた縄文人にとって、雪が積もる冬山は野生動物の足跡が残るため見つけやすく、狩りに好都合だったと見ている。
小島さんは「雪は現代人にとって厄介に思われがちだが、縄文人は違った見方をしていたのかもしれない。なぜこの地域で火焔型土器が多く見つかるのか。土器を見て触って雪国の風土も知ってほしい」と話している。
縄文土器に詳しい国立歴史民俗博物館(千葉)の中村耕作准教授は「触れる展示は土器の質感といった見るだけでは得られない価値があり、縄文文化の面白さの発見につながる。歴史の復元の意義や、地域に伝わる宝を知ってもらう上で貴重な取り組みだ」と語る。
「太陽の塔」を手掛けた芸術家の岡本太郎は、日本文化の源流を示す火焔型土器を見た時に「なんだ、コレは!」と叫んだとされる。記者は北海道で見たアイヌ民族の服と土器の文様が似ていると感じた。文化庁の文化遺産オンラインには火焔型土器について、こう書かれている。「縄文人は何をイメージして作ったのでしょう? あなたにはどんなふうに見えますか?」
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
神秘的な美しさにうっとり……景色が透き通る水晶の遮光器土偶
おたくま経済新聞 / 2024年9月14日 12時30分
-
フェリシモ「ミュージアム部」初の展示!企画展【ミュージアム部×BUNKITSU】を文化を喫する本屋「文喫」福岡天神で開催。開発裏話・POPUP SHOP・コラボ喫茶も
PR TIMES / 2024年9月9日 11時45分
-
千手発電所一般公開十日町すこやかファクトリー10周年記念イベントを実施
PR TIMES / 2024年9月2日 15時45分
-
松戸市立博物館 企画展「異形土器 縄文時代の不思議なうつわ」を開催
PR TIMES / 2024年8月23日 15時45分
-
新潟市中央区の信濃川で8月に見つかった遺体、身元が判明
新潟日報 / 2024年8月16日 8時10分
ランキング
-
1〈政治家を志した元女子アナが転落死〉「誹謗中傷とデマに悩んでいた」慶応ミスコン出身、外資系コンサルにも勤務、華々しい経歴も衆院補選の公認が一転取り消しに
集英社オンライン / 2024年9月10日 17時20分
-
2レールの分岐器にカメが挟まる…駅構内の信号が赤から切り替わらず、JR奈良線11本に運休と遅れ
読売新聞 / 2024年9月14日 8時51分
-
3関東〜九州の18都府県に熱中症警戒アラート 猛暑日予想のところも
ウェザーニュース / 2024年9月14日 7時20分
-
4兵庫斎藤知事、迫られる失職か議会解散 県議会維新も不信任案共同提出、19日可決へ
産経ニュース / 2024年9月13日 21時25分
-
5番組でネコプリンを「韓国スイーツ」と紹介、造形作家が異議 NHKは一部反論も「公式Xで表現を改めた」
J-CASTニュース / 2024年9月13日 19時19分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください