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地域文化のゆりかごに幕 神戸・世良美術館が来春閉館、惜しむ声

毎日新聞 / 2024年9月27日 14時30分

円柱の塔がシンボルの世良美術館。世良さんの没後は館長の濱﨑庄一さんらが守ってきた=神戸市東灘区で、山本真也撮影

小磯良平と親交

 神戸・御影の住宅街にある個人美術館「世良美術館」(同市東灘区御影2)が来春、閉館する。神戸出身の洋画家、小磯良平(1903~88年)と親交があった画家の世良臣絵(とみえ)さん(故人)が32年前に私財を投じて開設したレンガ造りの美術館で、絵画に囲まれた欧州のサロンの雰囲気が芸術ファンに親しまれてきた。閉館まで別れを惜しむアーティストらがコンサートなどを予定している。【山本真也】

 世良さんは11年、東京生まれ。40年に歯科医の夫と結婚して神戸に移り住み、近くにアトリエがあった小磯と親交を深めた。元々はピアノ指導者だったが、戦後、小磯に師事して本格的に絵画の勉強を始めた。

 美術展で入選を重ね、66年に1年間、フランスに留学。その際、個人の邸宅で音楽や美術鑑賞を楽しむサロン文化に触れる機会があり、魅せられた。「女性が集まり、ほっとできる場所を」と92年に80歳で自宅敷地に夢だった美術館を建設した。地元に小さな美術館をつくることは小磯の願いでもあったという。

 自然光が入るように窓を大きくとり、1階は自身の油彩やガラス絵、2階は小磯や竹中郁、小松益喜など神戸ゆかりの著名画家の作品を展示。円柱の塔が特徴の建物は閑静な住宅街にマッチし、数々の建築賞を受けた。

 スタインウェイのグランドピアノを置いたサロンスペースは床が大理石で天井は吹き抜け。音響に優れ、クラシックや和楽器などのコンサートが開かれてきた。地下はアート作品の個展会場に使われた。

 ただ、自治体や企業系の美術館と違って、個人資産や入場料、イベント収入だけで運営していくのは困難で、世良さんは絵画教室を開いて生徒を集めて資金を捻出した。

 世良さんは2009年に98歳で死去。スタッフの濱﨑庄一さん(70)が館長を引き継いで運営を続けてきたが、資金の見通しも厳しくなったこともあり、17回忌にあたる25年3月で区切りをつけることにした。

演奏会など計画

 閉館までに出演歴のあるアーティストらがコンサートなどを計画。イベント情報は同美術館ホームページ(https://seramuseum.weebly.com/)で。美術館スペースは24年12月末で閉館し、所蔵作品は公共団体や法人に無償譲渡する。

 閉館後も建物は残り、新オーナーが25年6月から「みかげ芸術堂」の名称でコンサートホールや音楽練習スタジオとして活用する。

 濱﨑さんは世良さんについて「明るく社交的でエネルギーにあふれる人だった」と振り返り、「閉館はさびしいが、彼女から託された地域の文化の揺り籠としての役割を果たせたと思う」と話している。

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