地震で仕事失い、やっと再就職 直後に襲われた大雨 帰り待つ家族
毎日新聞 / 2024年9月28日 12時40分
あと少しで夫の手を握ることができたのに。娘は地震で失った職をやっと見つけたところだった。亡き妻に伝えたい「ありがとう」。あの日から1週間。豪雨の爪痕が残る能登半島で、最愛の家族を思う人たちがいる。
元日の地震は女性の家と仕事を奪った。仮設住宅で暮らし、ようやく働き口が見つかったところだった。大雨が襲う中、職場から戻る途中だったのか。その姿は見つかっていない。
中山美紀さん(31)は21日朝、石川県輪島市町野町の仮設住宅から仕事で出かけたきり、帰ってこなかった。職場は車で1時間かかる穴水町の清掃会社だ。心配になった父親(62)は雨が落ち着いた23日、会社に向かった。
中山さんのタイムカードには、退勤時間として21日の「午前11時6分」と打ち込まれていた。一帯に大雨特別警報が発表された直後だ。職場から帰るよう促され、車で出ていくところを同僚が見ていた。
24日、警察から「車が見つかった」と連絡を受けた。駆けつけたのは川沿いを走る能登町久田(きゅうでん)の県道だ。仮設住宅から約8キロの場所で、中山さんの車が脱輪していた。
エンジンがかかり、ギアはドライブに入っていた。鍵は掛かっていない。娘はいなかった。「脱輪して車の外に出て、水にのまれたのかもしれない」。考えたくもない想像を語った。
中山さんは地震で自宅が傾き、家族で転々とした。今の仮設住宅にたどり着き、6月ごろから一家6人で暮らしていた。もともと勤めていた病院は再建が難しくなり、退職した。就職先を探し、9月から働き始めたばかりだった。
「地震さえなければ美紀が職場を変えることも、あの道を通ることもなかった。全てを狂わせた」。祖父の勝さん(86)は悔しさをあらわにした。
愛嬌(あいきょう)のある笑顔。「行ってきまーす」と元気で大きな声。「とにかく生きて帰ってきて。抱きしめさせて」。家族が帰りを待っている。【森田采花】
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