登山届、遭難者半数が未提出 スマホアプリ導入で把握数倍増 三重
毎日新聞 / 2024年10月2日 10時45分
もしもの遭難に備え、緊急連絡先や行程などを記して提出する登山届。三重県内で昨年9月にスマホアプリで提出されたものも県警が把握できるようになったことを受け、今年1~8月の把握数は前年同期比約2倍の3万8125件と過去最多を記録した。しかし、遭難者については未提出の人が多く、県警地域課は提出の呼び掛けをさらに強めている。【渋谷雅也】
「山に入る前に必ず登山届を出してください」。県や県警などでつくる県山岳遭難防止対策連絡協議会のメンバーら約20人が8月10日、菰野町の御在所岳中道登山口で登山客に声を掛けた。
昨年8月まで登山届は登山口の提出用ポストに投函(とうかん)するか、公益財団法人日本山岳ガイド協会が運営するWeb登山届「コンパス」などでの提出が主流だった。だが、これでは救助活動が必要となった時、提出された登山届を探し当てて想定される登山道をたどるなど時間がかかるのが実情。対応が遅れるケースもあった。
そこで県警は昨年9月に登山地図GPSアプリ「YAMAP」を運営するヤマップ(福岡市)と協定を締結。利用者がアプリ内で作成、提出した登山計画書の情報を従来の登山届と同様に県警で把握できるようになった。
登山ルートの地図をスマホに取り込んでおくことで、携帯電話の電波が届かない山中でもGPSで現在地が地図上に表示される仕組み。捜索に必要な情報を共有でき、迅速な救助につながっている。
例えば1月17日、愛知県田原市の51歳男性が大紀町の姫越山で登山中に滑落して遭難したケース。同日午前5時50分に男性の妻から「夫と連絡が取れない」と110番通報があり、同10時55分に警察と消防が捜索を始めた。「YAMAP」で登山届を提出していた男性の位置情報が共有され、捜索開始から約40分後に登山道から約3メートル下にいた男性を発見。男性は左大腿(だいたい)骨が折れていたが命に別条はなかった。
一方、登山届の把握数が倍増したのに遭難者の中には登山届を出していない人が相変わらず目立つ。県警地域課によると、過去5年間の山岳遭難者の約7割は未提出。今年1~8月末では、未提出の割合こそ減ったものの遭難者35人のうち約半数の18人が提出していなかった。
紅葉の奇麗な秋は本格的な登山シーズン。昨年は10月と11月に計17件の山岳遭難があり、全体の3割を占めた。県警地域課は「安易な登山は控え、体力を考えて登山計画をしっかり立てること。登山届を必ず提出して安全を第一に心がけてほしい」としている。
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