能登の被災地でイノシシ被害深刻 「多い日は7~8頭で作物あさる」
毎日新聞 / 2024年10月3日 14時30分
能登豪雨に襲われた石川県の能登半島北部で、鳥獣被害の増加を懸念する声が上がっている。輪島市の門前町浦上地区では、記者の目の前でイノシシが畑を荒らしていた。避難せず、自宅で暮らしている高齢女性は「最初は『うり坊』が可愛いと思ったが、今では腹立たしい」と頭を抱える。
秋になり女性が自宅そばの畑で育てているのは、サツマイモやサトイモだ。イノシシはこうした作物が好物らしい。
以前は1~2頭見かける程度だった。だが、豪雨後は住民が避難して出歩く人がほとんどいないのを察しているのか、小さいイノシシも含めて集団で来るようになった。
女性が見ていることに気づいても、動じずに畑に居座っている。
「1週間ほど前から増え、多い日は7~8頭で来て作物をあさっている」
こうした状況に、輪島市の担当者はいくつかの要因を推測した。
豪雨による土砂崩れなどの影響で鳥獣の侵入を防ぐ防止柵やネットが壊れて、イノシシの侵入路ができた点や、住民が避難して田畑の管理ができていない点、集落に人がいなくなってイノシシの警戒心が薄れた点を挙げた。
2011年の東京電力福島第1原発事故では、放射性物質の影響で避難指示が出され無人となった福島県の原発周辺の集落で、野生動物が我が物顔で歩き回り、住宅や農地を荒らした。
イノシシは餌を探したり、体に付いた虫を除いたりするため、農地にも大きな穴を開ける。すると、耕作地として使えなくなってしまうという。
このため、地元自治体は避難中の住民の帰還に支障が出ることを懸念し、駆除に力を入れていた。
石川県も状況を注視している。地元市町は災害対応に追われているため、鳥獣被害の現状は把握できていない。
ただ、鳥獣被害を防ぐ柵が壊れるなどの被害は耳にしているという。県里山振興室の担当者は「防止装置の再設置などに国の交付金を充てることができるので、市町からの被害報告を気にしている」と話した。【山口起儀、矢追健介】
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