新大阪駅第1号の券も 切符集めて60年超、マニアが刻む「歴史」
毎日新聞 / 2024年10月6日 14時0分
津市博多町の津博多郵便局で5年も前から、毎週定期的に展示物を入れ替えながら続く小さな「展覧会」があります。「日本列島各駅停車10000駅展」。近くに住む伊藤秀夫さん(76)が60年以上かけて集めた鉄道駅の入場券の展示です。
先月、伊藤さんから津支局に届いた便りは「私は鉄道切符マニアです」で始まり、1964年10月1日の東海道新幹線開通に合わせて開業した新大阪駅に並び、1番最初に発行された入場券を入手したという「武勇伝」がつづられていました。
東海道新幹線開業からちょうど60年の節目。面白い話が聞けそうだと思い、取材したのですが、そんな逸話がかすむほどの努力に驚きました。さすが自分で「マニア」を名乗るだけのことはありました。
収集に取り付かれたきっかけは高校1年の頃、同級生からもらった最北端の駅・稚内の入場券だったといいます。新大阪駅開業はその少し後。前日、津から蒸気機関車などを乗り継いで到着すると、新聞紙を敷いて切符の販売窓口の前に陣取り、第1号の入場券をゲットしました。「蒸気機関車の黒と真っ白な新幹線の対比が鮮やかだったことは忘れられない」そうです。
社会人になってからは印刷会社の営業の傍ら、日本中を駆け巡る日々が続きました。遠方は北海道内や九州内などで国鉄(JR)が乗り降り自由の「ワイド周遊券」をフル活用。降りては買うを繰り返すなどして全駅制覇したそう。
また、100駅ある大阪市営地下鉄(大阪メトロ)は週末2回通って全て集める短期決戦だったといいます。
しかも、1回購入したらおしまい、ではありません。料金が改定されるとなるべく新しいものを買うように努めていて、JR亀山駅など10円だった頃から現在の150円まで全てがそろっています。
最近は無人駅も少なくないので、入場券の代わりに車内で発行される整理券を受け取って「足跡」を残す工夫も。また、自動券売機から出てくる軟券は昔の硬券と違って地紋がすぐに消えてしまうのでカラーコピーで複製し、一枚ずつラミネート保存しています。
ここまで来るともはや切符の「歴史」を記録する作業。毎日の出来事をコツコツ書き続ける記者の仕事に通じるものがあると感じました。
「これ、伊藤さんが死んじゃったら、家族にはごみですね」。この質問に対する答えがまた奮っていました。
「それで構わないんです。私にとってはコレクションすることが楽しみ。きょうを満足できればそれでいい。それがたとえ自己満足であってもね」
全て展示し終わるまで、あと3~4年。「最後まで付き合う」と笑う豊田久局長の覚悟もまたすてきでした。【津支局長・山本直】
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