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「がん診断に役立つ可能性」 ノーベル賞「マイクロRNAの発見」

毎日新聞 / 2024年10月7日 21時7分

2024年のノーベル生理学・医学賞を発表する記者会見=スクリーンショットより

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は7日、2024年のノーベル生理学・医学賞を米マサチューセッツ大のビクター・アンブロス教授(70)と米ハーバード大のゲイリー・ラブカン教授(72)に授与すると発表した。遺伝情報の一つ「マイクロRNA」の発見と、マイクロRNAによる遺伝子の制御に関する研究成果が評価された。

 生物の遺伝情報はDNAに存在し、その中から必要な遺伝情報を抜き出す「転写」と呼ばれる仕組みを経て「メッセンジャー(m)RNA」が作られる。mRNAによって細胞の基となるたんぱく質が生成されることで、筋肉や腸、神経細胞などそれぞれの器官・細胞の正常な活動が維持される。

 しかし、器官によって必要なたんぱく質が異なるため、遺伝子の活動を適切に制御できなければ各器官が適切に働かず、深刻な病気につながる可能性がある。この仕組みを解き明かすことが、病気の原因解明や治療法開発のために大きな課題だった。

 2人は1980年代後半から、体長1ミリほどのひも状の生物「線虫」を使って多細胞生物の組織がどのように発達するか調べ、たんぱく質の生成前に発現する遺伝子に着目した。

 アンブロス教授は、変異体の線虫が持っていた特殊なDNAがたんぱく質の生成を妨げることを確認した。さらに2人はこの特殊なDNAが異常に短いRNA(マイクロRNA)を作り、マイクロRNAによってmRNAの機能が阻害されることを解明し、その成果を93年に発表した。

 その後の研究で、マイクロRNAによる遺伝子制御は多細胞生物に共通する仕組みで、先天性難聴や目の病気、さまざまな組織のがんに関係することが分かってきている。

 東京大の泊幸秀教授(RNA生物学)は「マイクロRNAが発見されるまでは、そのような小さなRNAは(たんぱく質の設計図になり得ない)ごみのようなものだと思われていたが、遺伝子発現後の絶妙なブレーキだった。マイクロRNAを補充することなどで病気の治療につながる研究が世界中で進んでいる。がん診断にも役立つ可能性がある」と話した。

 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億6000万円)が贈られる。【鳥井真平、渡辺諒、寺町六花】

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