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「生化学と生物学に新時代」 AIの活用も ノーベル化学賞の3氏

毎日新聞 / 2024年10月9日 21時1分

デミス・ハサビス氏=グーグルディープマインド社のホームページより

 スウェーデン王立科学アカデミーは9日、2024年のノーベル化学賞を米ワシントン大のデービッド・ベイカー教授、米グーグル傘下ディープマインド社のデミス・ハサビス氏とジョン・ジャンパー氏の3人に授与すると発表した。

 ベイカー氏は「計算によるたんぱく質の設計」、ハサビス氏とジャンパー氏は人工知能(AI)を利用した「たんぱく質の構造予測」の研究開発に貢献したと評価された。アカデミーは「3人の研究は生化学と生物学の研究に新しい時代を開いた」とたたえた。

 たんぱく質は20種類のアミノ酸の組み合わせで構成されている。ホルモンや抗体など生命を維持する上で不可欠な物質だ。たんぱく質が生体内でどういう働きをするかを知るためには構造を知ることが必要だが、かつては構造を明らかにするために、たんぱく質を結晶化し、X線で解析していた。

 ベイカー氏は1990年代から、たんぱく質の構造に関する研究を始め、構造を予測してその通りに設計するプログラムを開発。たんぱく質を実際に作り出し、その成果を03年に発表した。未知のたんぱく質を作り出すことにも成功した。

 ハサビス氏は10年にディープマインド社を設立し、AIの開発を本格化。たんぱく質の構造予測に取り組んだが、当初はその精度が低かった。ジャンパー氏が17年に同社に入社後、2人は機械が自ら学習する「深層学習(ディープラーニング)」の技術を活用し、既に知られていたたんぱく質の構造予測に成功した。3人の業績は医薬品や新素材の開発などにつながっている。

 ハサビス氏は10代でプログラマーとなり、ゲーム開発者を経てAIの開発に着手。10年代には囲碁AI「アルファ碁」を開発し、トップ棋士に勝利するなど話題になった。ジャンパー氏は、ディープマインド社が極秘にAIによるたんぱく質の構造予測の研究を始めたと知り、自身のアイデアで同社のAIをさらに改良させたいと履歴書を送り、共同研究を始めたという。

 慶応大の荒川和晴教授(システム生物学)は「構造解析には、結晶化の作業などで数カ月単位の時間がかかっていたが、現在は分単位で予測できるようになった。構造予測は創薬にも生かされ、インフルエンザ治療薬のタミフルはたんぱく質の機能を予測して開発された薬だ」と解説する。

 産業技術総合研究所の富井健太郎・研究チーム長(計算生物学)は「AIがさまざまな分野の研究を加速させているという事実があり、この数年その速度が速まっている。大きな時代の流れを感じる」と話した。

 授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれ、賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億6000万円)が贈られる。【鳥井真平、藤沢美由紀、垂水友里香、信田真由美】

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