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「被爆者の証言」核兵器反対の文脈で評価 被団協・平和賞授賞理由

毎日新聞 / 2024年10月11日 18時45分

原爆ドーム=広島市中区で、本社ヘリから加古信志撮影

 ノーベル委員会が公表した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の授賞理由は以下の通り。

  ◇   ◇   ◇

 広島と長崎の被爆者による草の根運動である日本被団協は、核兵器のない世界を実現するための努力と、核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきたことが評価され、平和賞の授賞に至った。

 1945年8月の原爆投下を受けて世界的な運動が起こり、核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的結末に対する認識を高めるべく、そのメンバーはたゆまぬ努力を続けてきた。

 核兵器の使用は道徳的に容認できないという強力な国際規範が徐々に形成されていった。この規範は「核のタブー」として知られるようになった。

 広島と長崎の被爆者の証言は、この大きな文脈において他に例がないものだ。

 こうした歴史の証人たちは、個人的な体験を語り、自らの経験に基づく教育キャンペーンを展開し、核兵器の拡散と使用に対する緊急の警告を発することで、世界中で核兵器に対する広範な反対意見を生み出し、それを強化するのに貢献してきた。

 被爆者は、筆舌に尽くしがたいものを描写し、考えられないことを考え、核兵器によって引き起こされる理解を超えた苦痛を何とか理解する手助けをしている。

「核のタブーの確立に多大な貢献」

ノルウェーのノーベル委員会はそれでもなお、核兵器は80年近く使われなかったという、勇気づけられる事実を認めたいと願っている。日本の被団協や被爆者を代表する方々の並外れた努力は、核のタブーの確立に多大な貢献をした。それゆえに、今日この核のタブーが圧力を受けていることは憂慮すべきことだ。

 核保有国は、兵器の近代化と性能の向上を進めており、核兵器を手に入れようとしているような新しい国々もある。そして、現在進行中の戦争で、核兵器を使用するという脅しも行われている。人類の歴史におけるこの瞬間に、核兵器とは何かを思い起こす価値がある。それは、世界がこれまで目にしてきた中でも核兵器は最も破壊的な兵器だということだ。

 来年は、米国の二つの原子爆弾が広島と長崎の居住者およそ12万人を殺害してから80年の節目となる。その後の数カ月、数年の間に、その数に匹敵する人々がやけどや放射線障害で死亡した。今日の核兵器ははるかに破壊的な力を持っている。数百万人を殺害し、気候に壊滅的な影響を与える可能性がある。核兵器は我々の文明を破壊しうるのだ。

 広島と長崎の地獄を生き延びた人々の運命は、長い間覆い隠され、無視されていた。1956年、地元の被爆者協会と太平洋での核実験の被害者が、日本原水爆被害者団体協議会を結成した。この名前は、日本語では被団協と略される。協議会は、最も大きく、最も影響力のある被爆者団体となった。

苦しみも悲痛も、平和のために継承

 アルフレッド・ノーベルの構想の中核は、献身的な個人が違いを生み出せるという信念だ。今年のノーベル平和賞を日本被団協に贈ることにおいて、ノルウェー・ノーベル委員会は全ての(被爆による)生存者を称賛することを望む。彼らは、肉体的な苦しみと悲痛な記憶にもかかわらず、自らの犠牲大きな経験を平和への希望と約束を育むために用いることを選んだ。

 日本被団協は、何千もの(原爆)目撃者の言葉を提供し、決議と公へのアピールを発し、国連やさまざまな平和会議に毎年代表を送り、核軍縮の差し迫った必要性を世界に思い出させてきた。

 歴史の証人である被爆者はいつの日か、この世から去ってしまう。しかし、記憶に関する強い文化と継続的な献身とあいまって、日本の新たな世代がその経験と目撃者のメッセージを伝えるようになっている。彼らは世界中の人々を刺激し、学ばせている。

 このようにして、彼らは核のタブー(核兵器使用の禁忌)を保持するのを助けている。核のタブーは、人類にとっての平和な未来の前提条件だ。

 日本被団協へ2024年のノーベル平和賞を授与するとの決定は、しっかりと(アルフレッド・)ノーベルの意思に結びついている。

 今年の賞は、平和賞の名高いリストに加わる。このリストには、本委員会が過去に授賞してきた、核軍縮と軍備管理の問題での卓越した人たちが連なっている。24年のノーベル平和賞は、人類へ大いなる利益をもたらそうという努力を表彰するという、アルフレッド・ノーベルの望みを満たした。

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