「夢が本物になった」「胸がいっぱい」 被団協の役員らから喜びの声
毎日新聞 / 2024年10月11日 22時53分
ノーベル平和賞の受賞決定を受け、日本被団協の役員らからは驚きと喜びの声が上がった。
「受賞を通して核兵器がどんな兵器で、どんな被害をもたらすか改めて多くの人に知ってもらえるという意味でとてもうれしい」。田中熙巳(てるみ)代表委員(92)は埼玉県新座市の自宅前に集まった報道陣に笑顔で話した。
13歳の時に長崎市の自宅で被爆し、親族5人を亡くした。核兵器禁止条約の早期発効を求めた「ヒバクシャ国際署名」の呼びかけ人を務めた後、2017年に代表委員に就いた。受賞は帰り道に自宅近くで報道機関からの電話で知ったという。信じられない気持ちだったが、夢に見たことがあったといい、「夢が本物になった」と喜んだ。
東京都港区にある日本被団協の事務所には多くの報道陣が詰めかけ、職員が対応に追われた。日本被団協は12日に記者会見を行う。
11日午前、田中さんら役員は東京・永田町にいた。主要政党に対し、唯一の戦争被爆国として核兵器廃絶に向けて世界をリードし、核兵器禁止条約に署名・批准するよう要請した。
胎内被爆者の浜住治郎事務局次長(78)=東京都稲城市=は「受賞はまさかという気持ち。先輩たちの積み重ねてきた努力への評価だ」と喜んだ。その上で「世界にはまだ核兵器がたくさんある。現在のウクライナや中東の情勢を踏まえても、核兵器がなくなるまで、まだ力を注がなければいけない。今回の受賞を力にしていきたい」と語った。
木戸季市(すえいち)事務局長(84)=岐阜市=は「体験を語り継いできた長年の活動の結果だと思う。核廃絶はもはや『機運』ではない。世界中の人たちが、人類普遍の望みとして核兵器のない世界を求めているということがはっきりした」と話した。
17年にノーベル平和賞を受賞したNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の国際運営委員、川崎哲さん(55)は自身のブログに「今こそ世界は、被爆者の声に耳を傾けなければならない。これまでつらい記憶を思い出しながら、被爆の実相を語ってきてくださった一人一人の顔が思い浮かぶ。本当にうれしい」とコメントした。
日本被団協の国際活動に通訳として関わった東京大の西崎文子名誉教授(米国政治外交史)は「被団協の方々は『核兵器の地獄を見たのは自分たちしかいないんだ』というひたむきな思いで体験を語り継いできた。ウクライナやイスラエルを巡って政治家から『核兵器を使う』という言葉が飛び交う現状に対し、それでいいのかという重い警告になる」と指摘した。
核兵器廃絶に向けて活動する一般社団法人「かたわら」代表理事の高橋悠太さん(24)=横浜市=は中学、高校時代を広島で過ごし、日本被団協代表委員で96歳で亡くなった坪井直(すなお)さんと中学生の頃に出会い、証言を聞き取って冊子にまとめた。高橋さんは「これまで頑張ってこられた方々の顔が思い浮かび、胸がいっぱいになった。来年は核兵器禁止条約の締約国会議もあり、追い風になるのではないか。ただ、世界情勢は喜べるような状況ではない。次の世代が頑張る番だと思う」と力を込めた。【斎藤文太郎、椋田佳代、春増翔太、遠藤浩二、竹田直人】
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