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ドラマ「ライオンの隠れ家」に作品提供 自閉症の画家支える兄弟の絆

毎日新聞 / 2024年10月15日 17時51分

個展会場で作品を仕上げる太田宏介さん。キャンバスの枠部分にも丁寧に色を塗る=東京都中央区銀座8の銀座アートホールで2024年10月14日午後2時49分、井上俊樹撮影

 TBS系列で11日にスタートした金曜ドラマ「ライオンの隠れ家」は、自閉スペクトラム症の弟とその兄の兄弟の物語だ。ドラマの中で重要な小道具となる、弟が描く色鮮やかな絵は、ある自閉症の画家が提供した。作品が採用された背景には、ドラマ同様、兄弟の深い絆があった。

 ドラマは、柳楽優弥さん演じる主人公で市役所に勤める優しい兄と、坂東龍汰さん演じる弟の2人暮らしの生活に、「ライオン」と名乗る男の子が入り込んできたことで生じる「事件」を中心に展開する。こだわりが強く色彩感覚に優れる弟は、障害者が集う工房に毎日通い、絵を描く生活を送っている。

 11日の第1話では、動物園のポスターや、兄弟の自宅の壁に掛かった花など、弟が描いたいくつかの絵が登場した。これらを実際に描いたのは福岡県太宰府市の画家、太田宏介さん(43)だ。

 「最初は新手の詐欺かと思いました」。折しも東京・銀座のギャラリーで15日に始まった宏介さんの個展会場を訪ねると、兄の信介さん(50)が、TBS側から作品提供のオファーがあった時のことを冗談めかして振り返った。信介さんは弟の絵を販売したり事業所などにレンタルしたりする会社を経営しており、ドラマには描き下ろしを含め約30点を提供した。

 2歳のときに、知的障害を伴う重度の自閉症と診断された宏介さんが近所の絵画教室に通い始めたのは10歳のころ。ドラマの主人公の弟と同じく、宏介さんも子どものころから記憶力と色彩感覚に優れていた。特徴は、実物の色にとらわれないカラフルで斬新な色づかいとユニークな画風で、動物や花を好んで描く。15歳から開いてきた個展は50回を超えた。

 そんな宏介さんを支える信介さんは、2002年に福岡市美術館で開催された美術展で、前衛芸術家の草間彌生さんの絵と並んで飾られた弟の作品を見た来場者が「この絵もかわいいね」と言っているのを見て、その魅力に気付いた。

 高齢となった両親に代わり、宏介さんの絵を広めるため勤めていた会社を退職、12年に起業した。軌道に乗るまで時間がかかったが、メディアなどで作品が徐々に知られるようになり、今ではプロの画家として生活できるレベルになった。

 そこに舞い込んだのが、今回のオファーだった。信介さんは22年、起業の苦労話をまとめた著書を出版し、障害のある弟と生きる苦悩も率直に書いたが、この本を読んだTBSのプロデューサーがドラマへの協力を依頼。ドラマ自体は太田さん兄弟がモデルになっているわけではないが、撮影前には監督や弟役の坂東さんらが福岡を訪れ、宏介さんの創作や普段の生活の様子も見学した。TBSは「宏介さんの力強い絵にひかれた」と起用の理由を説明する。

 第1話では、「ライオン」と名乗る男の子に大好きな動物図鑑を取られたと勘違いした主人公の弟が、パニックになって壁に自分の頭を打ち付けるシーンがある。信介さんによると、宏介さんは以前のようにパニックを起こすことはほとんどなくなったが、個展開催のため東京でホテル暮らしをしている間も、自宅にいる時と同じように毎日夜に洗濯をしないと気が済まないなど「ルーティン」は多い。

 「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会」(東京)の事務局長も務める信介さんは「家族に障害者がいると周囲の目を気にする人も多く、私も以前はそうだった。ドラマが、障害者やその家族のことを理解してもらえるきっかけになればうれしい」と期待する。

 開催中の「太田宏介個展」は「銀座アートホール」(東京都中央区銀座8)で20日まで。午前11時~午後6時(最終日は午後4時まで)、入場無料。問い合わせは銀座アートホール03・3571・5170。【井上俊樹】

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