天武天皇にスポット 最古の貨幣「富本銭」特別展 奈良・万葉文化館
毎日新聞 / 2024年10月17日 12時28分
飛鳥池工房遺跡(奈良県明日香村飛鳥、7世紀後半)で1998年に発見された日本最古の貨幣を展示する特別展「富本銭特別展示 天武天皇と<飛鳥・藤原>の文化」が19日、遺跡の上に建つ県立万葉文化館で開幕する。富本銭は文化館建設に伴う発掘で発見されたため「里帰り展」と銘打っている。12月8日まで。
「富夲(本)」と刻まれた古代の銅銭は江戸時代から知られていたが、おまじないに使う「厭勝銭(えんしょうせん)」という説が強かった。しかし、銅製品の鋳造工房跡がある同遺跡から98年、富本銭が大量に出土。奈良国立文化財研究所(当時)は翌99年1月「流通を前提に作られたもので、和同開珎(708年)より古い、日本最古の貨幣」と発表した。
日本書紀には天武天皇が683年、「今後は必ず銅銭を用いよ」と命じたと書かれており、このころの製造とみられる。県は文化館建設を優先したため、遺跡は埋め戻され、富本銭は奈良文化財研究所飛鳥資料館(明日香村奥山)で保管している。ただ、2001年にオープンした文化館は当初予定を一部変更し、中庭に鋳造工房跡を復元。富本銭関連の常設展示も設けるなど配慮している。
遺跡からは大量の木簡も出土。その中には「天皇」の文字が書かれた最古の木簡も含まれており、律令国家成立期を語る最重要遺跡であると評価されている。埋め戻されなければ、今年9月に世界文化遺産候補として推薦された「飛鳥・藤原の宮都」の構成資産のひとつになったことは間違いないとされる。
特別展示は富本銭を作らせた天武天皇にスポットを当て、念持仏と伝わる吉野町の櫻本坊(さくらもとぼう)蔵「如来坐像(にょらいざぞう)」(7世紀後半)、天武・持統天皇陵古墳(明日香村野口)を江戸期に描いた「神代御陵図(じんだいごりょうず)」(1705年)など計約80点が並ぶ。井上さやか・企画研究係長は「遺跡からは舎人親王(とねりしんのう)や大伯皇女(おおくのひめみこ)ら万葉歌人の名が書かれた木簡も出土している。富本銭だけでなく律令国家成立期の政治、文化を物語る遺跡として再評価してほしい」と話している。
午前10時~午後5時半。月曜休館(祝日は開館し、翌火曜休館)。一般1200円、高校・大学生500円。小中学生300円。富本銭関連の常設展示や復元遺構は見学無料。問い合わせは万葉文化館(0744・54・1850)へ。【皆木成実】
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