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バス業者「限界」 揺らぐJR廃線の前提 北海道の交通に手詰まり感

毎日新聞 / 2024年10月20日 7時45分

小樽方面に向かうJR函館線の列車=北海道余市町のJR余市駅で2024年10月15日午後0時35分、金将来撮影

 北海道新幹線の札幌延伸に伴い、廃線が決まった並行在来線のJR函館線小樽―長万部間(140・2キロ)。道や沿線自治体などは代替案としてバス輸送への転換を検討しているが、運転手不足が深刻な課題の今、そのハードルは一層高まっている。市民の「足」の確保に、手詰まり感すら漂う。

揺らぐ“鉄道→バス”の前提

 「廃線か。道民の移動はますます不便になる」。10月中旬の余市駅で、札幌市厚別区の斎藤勝彦さん(68)はつぶやいた。函館線沿線の倶知安町出身で学生時代は小樽市に列車で出かけただけに実感がこもる。余市町の男性(80)は「私は、じきに運転しなくなる。バス転換が難しい中、町外にどうやって行けばいいのか」と嘆いた。

 並行在来線の沿線9市町と道は2022年3月、全区間廃止とバス転換の方針で合意した。小樽への通勤通学者が多いため、余市町は鉄道の存続を最後まで主張したが、重い財政負担もあって断念した。

 道内の経済や生活を支えてきた鉄道だが、60年前に約4000キロあった総延長は縮み、現在のJR北海道は2254・9キロ。函館線と同様に代替のバス運行を前提に路線が次々と廃止されてきたが、定石が揺らいでいる。

「2024年問題」の余波

 運転手の時間外労働の上限規制で人手不足が深刻化する「2024年問題」がバス業界に波及しているからだ。北海道バス協会が8月に実施した協会員対象のアンケートによると、回答した86社のうち7割以上が「運転手が足りない」。要員不足は乗り合いで362人、貸し切りで135人に上った。路線は23年同期比で80系統1370便が減った。

 今夏の並行在来線に関する協議会で、自治体側は新たに計141便のバスを必要とする運行計画を提案したが、北海道中央バスなど運行3社は「現在の路線を現行通り運行するだけでもかなり困難」と回答した。

 中央バスは札幌と近郊でさえ減便や路線廃止を余儀なくされ、4月には札幌と石狩市をつなぐ3路線を廃止し、道内80路線で320便減らした。来春には札幌市南区で、市営地下鉄真駒内駅から児童が登下校に利用する駒岡線を廃止する方針だ。担当者は「積極的な採用活動をしているが、現状を変える特効薬はない」とする。

スクールバスですら…

 道内第2の都市、旭川市も運転手不足が深刻だ。私立高の旭川実業と旭川明成は8月、委託先の道北バス(旭川市)から「乗務員の確保に見通しが立たない」と通告され、冬季(11~3月)のスクールバス運行を断念した。両校は「生徒や保護者の負担増は避けられない」と頭を痛める。

 旭川実業は例年、全校生徒の約3割に当たる300人程度が利用し、今年も同規模の希望者があった。ただし、新たな委託先は見つからず、宮下靖広校長は「人手不足は聞いており、減便かなと思っていた。本当にびっくりした」と話す。

 この冬はバス停から校舎まで約500メートルの坂を生徒は上ることになり、除雪の拡大や送迎車の増加による渋滞の発生も想定される。

 確実な収入源である貸し切り事業のスクールバスですら断念する道北バスも、やはり、深刻な人材難だ。この10年で乗務員は約3割減り、平均年齢は58歳と高齢化。24年問題で早朝や夜間の人繰りが一層厳しくなった。

 中田幸治営業部長は「生活路線を維持するにはスクールバスの運行中止しかなかった」と説明。赤字路線の維持もあって経営は厳しいが人材確保にも資金が必要で、「経営努力だけでは限界がある」と話し、公的な支援の必要性を訴える。

 札幌市都市交通課の担当者が地方の官民の思いを口にした。「我々も人材確保に全力を注ぐが、どうにかできる状況じゃなくなっているのかもしれない。国は公共交通の在り方の抜本的な見直しを考えてほしい」【金将来、横田信行】

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