御嶽山噴火災害、東京高裁も国の賠償責任認めず 遺族側の控訴棄却
毎日新聞 / 2024年10月21日 14時33分
死者・行方不明者計63人を出した2014年9月27日の御嶽山(長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火災害を巡り、犠牲者の遺族らが国と長野県に計3億7600万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(筒井健夫裁判長)は21日、請求を棄却した1審・長野地裁松本支部判決(22年7月)を支持し、遺族側の控訴を棄却した。
御嶽山では噴火の2週間以上前から1日50回を超える火山性地震が観測されており、控訴審では1審と同様に、防災機関や住民らに取るべき対策を5段階で知らせる噴火警戒レベルを1(平常=当時)から2(火口周辺規制)に引き上げなかった気象庁の判断の是非が争点となった。
高裁は判決で、御嶽山では過去に1日50回以上の火山性地震が観測されながら噴火に至らなかった例があると指摘。御嶽山は常時噴火を繰り返している火山でないため、火山学の知見の集積が十分に進んでいなかったと認めた。理論的・統計的な裏付けがあるとは言えない過去の例を参考に、警戒レベルを据え置いた判断は著しく合理性を欠くとは言えないと述べた。
1審・地裁支部判決は、観測データから噴火の前兆現象となり得る山体膨張の可能性を指摘した気象庁職員がいたことを挙げ、警戒レベルの据え置きを「違法」と認めていた。
しかし、高裁は、観測データの変化の量が小さく、気象庁でも当時、誤差を超えるものではないとされていたと言及。噴火後の国土地理院の見解でもこの観測データから山体膨張が生じたと断定できないとされたことを踏まえれば、気象庁の判断は違法とは評価できないとした。
判決後の記者会見で噴火で被災した原告の田幸秀敏さん(50)は「失望で力が抜けた」と肩を落とした。
気象庁は「火山活動の監視や評価の技術を向上させ、火山防災情報を的確に発表するよう努める」とのコメントを出した。【菅野蘭】
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