「微粒子まいて地球冷やす」米企業に日本から投資 世界では批判
毎日新聞 / 2024年11月4日 6時0分
上空に微粒子(エアロゾル)をまき、太陽光を人為的に遮って地球を冷やすとうたう米ベンチャー企業が、温室効果ガスの排出量取引に使う「カーボンクレジット」を模した商品で投資を呼びかけ、複数の日本の在住者が購入していることがわかった。
こうした行為は科学的な評価が定まっておらず、副作用もあるとして世界で批判が起きているが、規制する国際的な枠組みはない。効果が不明瞭なまま、環境ビジネスが過熱する実態が浮かんだ。
この企業は、米有名投資家などから出資を受けて2023年に事業を始めた「メーク・サンセッツ」(米サウスダコタ州)。気球に二酸化硫黄(SO2)を入れて打ち上げ、上空20キロの成層圏で破裂させる。まかれたSO2は化学変化してエアロゾルとなり、人工雲を作る。これが太陽光を遮って地球を冷やす。巨大火山の噴火で地球が冷やされることに着想を得たという。
毎日新聞のインタビューに応じた共同創設者のアンドリュー・ソング氏(38)によると、これまで打ち上げは100回を超え、計73キロのSO2を散布した。
ソング氏は、火山噴火をシミュレーションした過去の研究などから「二酸化炭素(CO2)7万3000トン分の温室効果を相殺できた」と試算する。だが、これは地球全体の排出量(22年に約368億トン)に比べればごくわずかだ。
メ社はウェブサイトで、散布による冷却に相当する分の温室効果ガスが削減できるとする独自の「冷却クレジット」を販売して投資を募っている。1クレジットは10ドルで、「年間1トンのCO2による温室効果を相殺する」分だという。
ソング氏によると、これまでに650人が購入し、うち16人は日本在住だった。定期購入者も155人おり、個人だけでなく企業経営者らの購入もある。
だがメ社に対し、科学界からは厳しい目が向けられている。エアロゾルを大気中にまく行為は、環境汚染や予期せぬ気候変化を招く可能性もあるためだ。
メ社は22年、予備的な気球の打ち上げ実験をメキシコ北西部で行った。これを受け、メキシコの環境・天然資源省は23年1月、国内での大規模な散布の実施を禁止すると発表。同省は「事前通知はなく、メ社は実験の結果を把握しておらず、気球は監視も回収もされなかった」と批判した。
ただ、メ社はこうした声を受けても事業を続けている。ソング氏は「200万トンのSO2を毎年成層圏にまき、太陽のエネルギーを1~2%ほどカットすれば、現在の温暖化は相殺できる」と主張。しかし結果はモニタリングしておらず、これまでの散布で冷却できたという根拠はない。
ある日本の研究者は「散布する技術自体はシンプルなため、こうした人たちが出てくることは想定されていた。食い止めるようなルールが必要だったのではないか」と話す。【信田真由美】
カーボンクレジット
企業や自治体が排出するCO2などの温室効果ガスの削減量を「クレジット」として認定し売買する仕組み。自らの余った排出枠をお金に換えたり、購入することで自らの排出分を相殺したりできる。脱炭素社会を目指す経済的手段の一つとして知られる。
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