教員雇い止め訴訟 2審破棄した最高裁、大学の判断を尊重
毎日新聞 / 2024年10月31日 20時43分
羽衣国際大(堺市)の専任講師だった女性(48)が違法な雇い止めをされたとして、大学教員としての地位確認を大学側に求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)は31日、無期雇用への転換を認めて女性側勝訴とした2審判決を破棄し、審理を大阪高裁に差し戻した。
大学教員の任期をどう定めるかは大学側の判断が尊重されるべきだとした判決。期限付きの契約で働く大学教員の雇用に影響を与える可能性がある。裁判官4人全員一致の意見。
2013年4月に施行された改正労働契約法は、期限付きの契約で働く期間が通算5年を超えると期限がない雇用への転換を求めることができる「無期雇用転換ルール」を定めている。
一方、大学教員については、雇用の流動性を高めて長期に及ぶ研究を保障する目的で改正大学教員任期法が14年4月に施行された。任期法は「多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職」について、無期雇用転換ルール適用までの期間を10年に延ばす特例を定めた。
判決によると、原告の女性は13年から専任講師として介護福祉士の養成科目を担当。18年に無期転換を大学側に求めたが、19年に雇い止めとなった。訴訟では、無期雇用転換ルールの対象となる期間が5年か、特例の10年かが争われた。
小法廷は、多様な人材を大学が確保できるようにするのが任期法の目的であり、任期法が期限付きで大学教員を雇用できるとしているのは、各大学の実情を踏まえた人材採用を尊重する趣旨だと指摘。特例対象を「殊更厳格に解釈するのは相当ではない」との初判断を示した。
その上で、女性が行っていた実践的な教育研究は教員の流動性を高めて最新の実務経験や知見を取り入れることが望ましく、特例対象に当たると結論づけた。
女性側は他の理由でも雇い止めが違法だと訴えており、小法廷は審理を尽くすべきだとして差し戻した。女性は「10年も不安定な雇用が続く大学教員が多くいる。落ち着いて働ける環境を求め、闘う」と話した。【巽賢司、菅野蘭】
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