クマと共存 模索続く
毎日新聞 / 2024年11月9日 16時0分
「いましたね」。樹木につけられたワイヤを、クマが必死に引っ張っている。長野県東御市で、イノシシやシカなどをとるための「くくりわな」に誤ってかかっていたのは、体長1メートルあまり、体重29キロのメスのツキノワグマだ。
市内ではシカとイノシシによる農作物の被害が相次ぎ、昨年度はそれぞれ約200頭、約60頭が捕獲された。 一方、誤ってクマがかかってしまうこともある。本来対象としない動物が捕獲されることを「錯誤捕獲」といい、長野県は原則放獣することにしている。
市からの連絡を受け車で駆けつけたのは、同県軽井沢町を中心に活動するNPO法人「ピッキオ」のスタッフで県クマ対策員の井村潤太さん(29)。麻酔銃で狙いを定めた。
銃から放たれた「投薬器」は肩に命中。約10分後、クマが眠ったところで井村さんが盾を手に近づいた。いびきをかくクマを数人で運び、車の後部のおりに寝かせた。その後、市職員立ち会いのもと、市街地から離れた山奥に放した。
ピッキオは県東部の自治体からの委託を受け、こうした放獣を昨年度だけでも96回実施した。人に害を与えていない個体が無用に傷ついてしまう恐れもあり、ベテランスタッフの田中純平さん(50)は「クマにかかりづらいわなもある。狩猟者に使ってもらうよう、行政側がより取り組むことが求められている」と話す。
「ワオン! ワオン!」。夜も明けきらない早朝、軽井沢町の人里近い山林に勇ましい鳴き声が響く。井村さんは訓練を受けた6歳のベアドッグ「エルフ」とともに、クマを山奥へと押し戻す「けん制」を行った。
軽井沢町からの委託で町内で捕獲されたクマに発信器を装着し、位置を把握。人間とのすみ分けをするため、人里に近づいた場合にだけけん制や追い払いをしている。昨年は計265回実施した。
田中さんは北海道でクマ対策に従事した経験もある。「(軽井沢は)森の中に人が住んでいて、ゴミステーションがあり、不特定多数のクマが出ていた。(人との距離が近く)危険だった」。銃を使った威嚇も難しく、米国の機関の協力を得て2004年からベアドッグを導入した。現在では4頭が活躍している。クマに開けられないゴミ箱の開発・普及にも取り組み、人里での人身事故を防いできた。
「クマは(フンを通して)種子を分散し、森をつくっている。私たちはその中で生かされている。被害を防ぎながらうまく一緒に暮らしていける地域、社会をつくっていきたい」【渡部直樹】
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
クマ被害防止へあの手この手=目撃情報集約、AI活用も―昨年多発の秋田・岩手
時事通信 / 2024年11月13日 6時23分
-
【岡山理科大学】獣医学部が開発協力したジビエのペットフード発売!
@Press / 2024年11月6日 11時0分
-
徳島・南阿波でスタートする新たなサル被害対策プロジェクト:「モンキードッグ」と最新テクノロジーで人とサルの共存を目指す
PR TIMES / 2024年11月6日 10時45分
-
熟練ハンターが伝授 狩猟の技術身に着けて 有害鳥獣駆除の人材確保へ見学ツアー
チバテレ+プラス / 2024年11月4日 17時22分
-
【星のや軽井沢】静寂に包まれる冬の軽井沢で、クマと人との共存を識る2泊3日のエコツアー「軽井沢ネイチャーステイ-冬-」開催|期間 : 2024年12月1日~2025年2月28日
PR TIMES / 2024年10月25日 14時15分
ランキング
-
1敦賀原発2号機 再稼働の前提となる審査「不合格」決定 原子力規制委の発足後初 日本原電は「大変残念」とコメント
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月13日 16時4分
-
2国民・玉木代表の不倫問題 党の倫理委員会が調査へ
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月13日 14時41分
-
3千葉ホテル強盗殺人事件 元従業員の男(47)を逮捕 事件への関与をおおむね認める 防犯カメラに似た人物映り浮上
日テレNEWS NNN / 2024年11月13日 17時35分
-
4トヨタ本社工場で火事 実験車両が燃える けが人逃げ遅れなし
CBCテレビ / 2024年11月13日 13時32分
-
5トランプ再登板で日本人の生活はどう変わるのか 第2次トランプ政権にとって主要な武器の中身
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 7時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください