海自掃海艇火災 船体引き揚げへ民間会社と調整開始 「捜索に全力」

沈没した海上自衛隊の掃海艇「うくしま」の一部＝2024年11月11日（福岡海上保安部提供）

　福岡県宗像市沖で海上自衛隊下関基地隊所属の掃海艇「うくしま」で火災が起き、沈没した事故で、海上保安庁は12日午前に船内を潜水捜索したが、行方不明となっている古賀辰徳3等海曹（33）は発見できなかった。海保と海自は今後も捜索を続ける。海自は船体の引き揚げに向けた調整を始めた。

　火災は10日朝に発生。うくしまは11日朝に沈没した。古賀3曹は出火元とされるエンジンルームにいたとみられる。

　福岡海上保安部によると、うくしまは船底を上にした状態で水深約40メートルの海底に沈んでいる。11日午後に続き12日午前も3回にわたって潜水士がエンジンルームなどを捜索したが、古賀3曹は見つからなかった。

　海自トップの斎藤聡・海上幕僚長は12日の定例記者会見で「引き続き海上保安庁と連携し、捜索、救助に全力で取り組む」と述べ、船体の引き揚げに向け、サルベージ船を保有する民間会社と調整を始めたことを明らかにした。現場海域では海自の掃海艦艇や護衛艦など12隻が捜索にあたり、今後は水中ドローンの投入や上空からの捜索も行うという。

　鎮火まで時間がかかったことについて、斎藤氏は「発生直後にブラックアウトが起きて（艇内は）真っ暗な状態だったと聞いている。煙が充満して熱も相当あったことから消火活動はかなり過酷だった」と話した。

　海自の掃海艦艇はうくしまを含めて木造が12隻、繊維強化プラスチック（FRP）製が6隻。海自はこれらを含むすべての艦艇について、エンジンや発電機、配管などに異常がないか確認するよう指示した。

　火災を受けて防衛省は12日、いずれも16～26日に予定していた機雷戦訓練と日米共同の掃海訓練を中止すると発表した。うくしまは訓練に参加するため10日午前、山口県下関市の基地を出港していた。

【平川昌範、松浦吉剛】

神戸大の若林伸和教授（海事科学）の話

　防火対策は取られていたはずだが、木造船のため火の回りが早く、消火が間に合わなかったのだろう。今後は不明者の捜索とともに原因究明が急務だ。エンジンには燃料を高圧にする部分があり、配管などにトラブルがなかったかどうか詳しく検証する必要がある。船全体の引き揚げが難しければエンジン部分だけでも引き揚げる必要があるが、火災による熱の影響もあり、検証は難しい可能性もある。