全国「少子化ランキング」が示す、子育て支援で少子化改善しない理由
毎日新聞 / 2024年11月15日 11時30分
2023年に日本全国で生まれた子どもの数は10年前と比べ約3割も減った。人口動態の専門家であるニッセイ基礎研究所の天野馨南子(かなこ)さんが算出した都道府県別の「少子化ランキング」を見ると、合計特殊出生率だけでは測れない少子化の理由が浮かび上がってくる。「女性の雇用改善」に向け、天野さんは自治体の対策に根本的な見直しが必要と説いている。
「少子化ランキング」は、13年と23年の出生数を比較し、その減少率(出生数減少率)を割り出した。
出生数減少率のトップは秋田県(41・5%)で、次いで岩手県(41・2%)、福島県(38・0%)だった。
反対に減少率が最も緩やかだったのは、東京都(21・5%)で、次いで大阪府(23・3%)▽福岡県(26・0%)▽千葉県(26・2%)▽埼玉県(26・7%)――と大都市圏が占めた。全国平均の減少率は29・4%だった。
深刻な少子化は、地方の中枢都市にも迫っている。
東北各地の若者が就職先として選んできた仙台市を抱える宮城県。いわば東京に出る若者をせき止める「ダム」の役割を果たしてきたが、減少率は34・9%に上り、少子化ランクは12位と上位だった。
さらに東京、大阪に次ぐ就職先だった名古屋市を含む愛知県も、東京を就職先に選ぶ女性が増えたことで19年以降は転出超過エリアに転じている。
愛知県への就職者が多かった近隣の静岡県(37・3%、5位)や岐阜県(34・6%、14位)、三重県(34・4%、15位)も少子化ランク上位に位置した。
一方、少子化の指標として用いられる合計特殊出生率が0・99(23年、厚生労働省)と全国最下位の東京都。深刻な少子化を思わせるが、出生数でみると、全国で最も減少が緩やかだ。
意外な結果にも思えるが、合計特殊出生率は地域の出生数の多寡とは別物だ。
合計特殊出生率は、15~49歳の年齢ごとに、出生数(生まれた子どもの数)をその年齢の女性の数で割り、それらをすべて合計することで女性1人が生涯に産む子どもの数を算出する。
このため、若い未婚女性が多く転入する東京は、女性数が増加して割り算の分母が大きくなり、合計特殊出生率が低下する。逆に、女性の転出が多い地方は上昇する。就学や就業時に転入出が多い日本では、地域別の合計特殊出生率を見ていても、少子化の実情を測りきれない。
ちなみに、夫婦1組がもうける子どもの数は、50年前からそれほど変わっていない。国立社会保障・人口問題研究所によると、1972年の2・20人に対し、2021年は1・90人だった。
ニッセイ基礎研の天野さんは、少子化が加速した原因を「若い女性が地元からいなくなったことによる婚姻減」と分析する。
若い女性たちはなぜ地元を去るのか。
天野さんは女性の流出を生み出しているのは「雇用問題」と指摘する。自治体が少子化施策として実施する子育てや不妊治療などの支援は「未婚女性の引き留めには効果が薄い」といい、「当事者である女性の声に耳を傾け、地域を去って行く原因に向き合うことが必要だ」と訴える。
女性の転入が多い大都市圏の労働市場は、賃金の高さや仕事の選択肢の多さなどで地方を圧倒する。リモートワークなど自由度の高い働き方も浸透している。
X(ツイッター)で地方で働く女性の投稿を見ると、「男性と同じ仕事をしてるのに賃金格差がある」「仕事は男性のサポートや雑用」「どんなに外でキャリアを積もうと飯作りは女」――などと仕事の待遇ややりがい、性差による役割意識の根強さに不満を募らせる声がみられる。
天野さんは「女性の希望に沿った労働環境の整備が必要だ。雇用問題への根本的対策を打たない状況が続く限り、少子化は改善しない」と警鐘を鳴らしている。【嶋田夕子】
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