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元十両、高校教師に 土俵人生生かし授業「『番付』上げていきたい」

毎日新聞 / 2024年11月21日 18時21分

保健の授業をする浜町明太郎さん=東京都葛飾区の都立農産高で2024年10月25日午後2時43分、早川健人撮影

 大相撲の元十両・千代の海の浜町明太郎さん(31)が10月から、東京都立農産高(葛飾区、平柳伸幸校長)で保健体育の時間講師として教壇に立っている。大相撲は6月に引退したばかりで、高校教師を第二の人生に選んだ。「授業のレベルはまだ序ノ口ですが、これから『番付』を上げていきたい」と笑顔で語る。

 「お相撲さんは1日300回が基本。とりあえず10回ぐらい踏んで、上で3秒ぐらい止めてみて。どんなスポーツでも体幹は重要になってくるから」--。10月末の体育の授業はサッカー。約20人の1年生を前に、準備体操で四股を披露してみせた。生徒の渡辺春太さん(16)は授業後「初対面の授業では怖い雰囲気しかなかったけれど、2回目の今日は柔らかくて優しい。初めて笑っているのを見た」と話した。

 保健の授業では2年生の「働くことと健康」という単元で「健康を維持しなければ長く働くことができず、よい収入も得られない」と強調した。園芸デザイン科と食品科がある同校は農業や食品関係へ進む生徒が多く、働くことは身近なテーマだ。けがに苦しんだ自身の土俵人生も重ねて授業を展開した。

 高知県黒潮町出身で幼少期から相撲を始め、強豪の日本体育大から九重部屋に入門した。2015年夏場所で初土俵を踏み、序ノ口、序二段、三段目で優勝。幕下上位まで上がったが、右ひじを手術して三段目下位に陥落した。18年名古屋場所で新十両昇進を果たした。十両に4回上がって幕下に4回落ち、十両在位は通算15場所だった。最高位は十両8枚目で、9年間のプロ生活に幕を下ろした。

 「中学と高校の相撲部顧問が親身になってくれるいい先生で、自分も教師になりたいと思って日体大へ入り、教員免許を取った」と明かす。大学4年の6月に母校の高知県立宿毛高で教育実習もした。「プロに行ってよかった。成績がいい時も悪い時もあったが、やり切った。行かなければ後悔していた」と振り返る。

 9月に都立足立新田高(足立区)で教師の欠員を埋める最長で週9時間勤務の時間講師を始め、10月から農産高に移った。契約は来年3月までで、同7月の都の教員採用試験での正式採用を目指している。「10年前に実習をした時はタブレットなんて無かったし、(スライドを作るソフトの)パワーポイントも使っていなかった」と戸惑いながらも「周囲の先生たちには『場数を踏んだらいいよ』とアドバイスされ、確かにそうだなと思った」と、努力の日々は続く。「ちょっとでも教科書の内容を超える授業がしたい」という。

 指導する同校教務部の庄司一也さん(64)は「グラウンドの白線もまだ真っすぐ引けないし、経験は浅い。でも真面目で優しいし、とにかくにこやか。伸びしろがある」と温かく見守る。

 現役当時138キロあった体重は120キロに。「食べる量が格段に減ったので、勝手に落ちている。減少が止まったら筋力トレーニングをして2桁台にダイエットしたい」と話す。来年2月2日に両国国技館で断髪式を控えていて、それまではまげを付けたまま授業を続ける。【早川健人、写真も】

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