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初代門司港駅関連遺構の一部を現地保存へ イコモス声明受け方針転換

毎日新聞 / 2024年11月21日 21時23分

追加発掘調査が終わり、造成工事が始まった複合公共施設の建設予定地。初代門司港駅関連遺構の大半は今後解体され、土砂(左下)で埋め戻される=北九州市門司区で2024年11月15日午前10時21分、伊藤和人撮影

 北九州市門司区のJR門司港駅そばで見つかった明治期の初代門司港駅(当時の名称は門司駅)関連遺構について、北九州市は21日、一部を現地保存、一部を移築する方針を明らかにした。市は全面的な取り壊しも検討したが、解体中止を求める国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)が国際声明「ヘリテージアラート」を発令したことなどを受け、方針転換した。遺構の大部分は、市が現地に計画する複合公共施設建設に向けた造成工事で近く解体される。

 武内和久市長が同日、記者会見で明らかにした。保存するのは、2023年秋の調査で見つかった明治期の機関車庫の基礎部分(長さ約32メートル、幅約12メートル)のうち、複合公共施設建設の工事に影響を及ぼさない場所にある一部箇所。解体せずに保存して埋め戻す予定で、展示はしないという。

 移築するのは、当時海を埋め立てた場所と元々陸地だった場所の境界にまたがる地点で、地盤の強弱に応じて異なる工法で造られた部分。一部を切り出して複合公共施設の床下にガラス張りで展示する方針。保存または移築する詳細な範囲は今後検討する。保存や移築にかかる費用は、造成工事費や本体工事費に収め、追加出費はないとしている。

 武内市長は会見で「施設建設による市民の安全安心を第一に、さまざまな思いに心を寄せながら最適な方法を考えた」と理解を求めた。一方で「建設工事に影響を与えず、複合公共施設の設計内容を変更することなく一部を残すことにした」と述べ、施設建設を最優先する姿勢を崩さなかった。市は15日から現地で造成工事に着手しており、月内にも保存や移築をしない部分の解体を始める。

 遺構は複合公共施設建設に伴う23年9~12月の発掘調査で発見された。約900平方メートルの敷地から、1891(明治24)年に造られ、1914(大正3)年まで使われた初代駅の外郭部分の石垣や赤レンガの機関車庫の基礎部分、駅建設と同時期に実施された門司港築港時の海岸線を示す護岸石垣などが見つかった。

 日本イコモス国内委員会など国内外の学術団体は「日本の近代史にとって重要な門司の鉄道、港湾施設の成立を物語る歴史史料」などと高く評価。「国史跡級」の価値があるとして現地保存を市に要望してきた。

 だが市は、門司区役所や図書館などを集約する複合公共施設建設を、老朽化した公共施設を整理統合するモデルプロジェクトと位置づけて建設を最優先。遺構発見後も「施設の設計を変更すれば遺構の保存は可能だが、経費増と完成の遅れが見込まれる」として、現地保存には一貫して否定的な姿勢を示してきた。

 市議会も6月、遺構の追加調査の実施と市民への説明会開催を条件に遺構の解体を認め、施設建設の関連予算を承認した。市が解体を前提に8月から今月13日まで約770平方メートルにわたり追加調査を実施した際には、新たに初代駅舎の基礎とみられる遺構や大正期の倉庫なども見つかった。

 この間、イコモスが9月に国内で4回目となるヘリテージアラートを出し、現地保存を求める市民運動も活発化。議会の一部からも再考を求める声が出されたことから、市は一部保存と一部移築にかじを切った。

 20日に造成工事の中止を求める声明を武内市長宛てで提出した、日本イコモス国内委員会の溝口孝司副委員長(九州大教授)は「一部現地保存には敬意を表したいが、遺構の中心的存在である初代駅舎の外郭部分など保存すべき箇所はなお多い。市は引き続き設計変更などによる保存区域の拡大を検討してほしい」と学術団体との協議を求めた。【伊藤和人、山下智恵】

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