USJの「ジョーズ」や航空機にも 使途広がる廃食用油
毎日新聞 / 2024年11月23日 10時0分
天ぷらやフライドポテトといった料理で使用された廃食用油が新たな資源として存在感を増している。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市此花区)ではアトラクションの一部に廃食用油由来のバイオ燃料を使用し、環境に優しい航空燃料としても注目を集めている。
水しぶきを上げるボートに乗って襲いかかる巨大な人食いザメのスリルを体感するUSJの人気アトラクション「ジョーズ」。そのボートの動力源として22日からバイオディーゼル燃料の使用を始めた。
バイオディーゼル燃料の原料となるのは園内のレストラン28店舗から出る年間約21万リットルの廃食用油だ。それを精製したバイオディーゼル燃料約17万リットルのうち、約8000リットルを軽油との混合燃料としてジョーズに使用している。約16万リットルは外部企業に販売する。
廃食用油由来の燃料は、原油などを精製した化石燃料に比べて二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない。運営会社ユー・エス・ジェイはこの取り組みで年間約456トンのCO2削減に貢献できると試算している。
将来的には園内の発電や作業用車両にもバイオディーゼル燃料の活用を検討しており、同社ファシリティサービス&ディベロップメント部の海老原陽部長は「環境問題は重要な要素。社会貢献できるテーマパークづくりを進めたい」と話す。
廃食用油に熱視線を送るのが航空業界だ。「持続可能な航空燃料(SAF)」と呼ばれる航空機燃料の原料として、精製技術が確立している食用油が世界的な関心を集めている。
従来の航空燃料に比べてCO2を6~8割削減する効果があり、欧州連合(EU)は2025年からSAFの供給義務化を開始する。日本でも経済産業省が30年度にも石油元売り会社にSAFの生産や供給を義務付ける方針だ。各国で廃食用油の争奪戦が過熱している。
国内で発生する年間廃食用油は約50万トン。このうち約10万トンは家庭から出ているが、9割以上が廃棄されているという。
国内初の本格的なSAFプラントが設置される堺市は22日、プラント事業者との間で家庭から出た廃食用油の回収協定を締結した。市内のイオンモールなどに設置された回収ボックスで市民から廃食用油を集め、SAFプラントで活用する。
プラント事業に参画する日揮ホールディングスの西村勇毅SAF事業チーム・プログラムマネージャーは「廃食用油の確保が最大の課題。家庭から出る廃食用油を回収できればポテンシャルは大きい。まずは皆さんに回収を体験してもらいたい」と呼びかけている。【妹尾直道】
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