「すべてのまちに被害者条例を」 事故で長女失った母の願い 福島
毎日新聞 / 2024年12月1日 9時30分
長女を交通事故で失った福島県会津若松市の岡崎照子さん(66)が、県内の全市町村に犯罪被害者支援条例の制定を目指して活動している。犯罪被害者週間が始まった11月25日には、条例未制定の同市の図書館に、犯罪被害者らが作成したブックレット「すべてのまちに被害者条例を」2冊を寄贈した。「天国で娘に再会した時に『お母さんもできるだけのことやったよ』と言えるよう条例制定を働き掛けたい」と決意している。【錦織祐一】
長女で中学3年だった愛さん(当時14歳)は2005年8月16日、夏休みに友人と図書館で会った自転車での帰り道にスピード違反の車に衝突され、2日後に亡くなった。中学校でなぎなた部に所属して東京・日本武道館での全国大会にも出場。勉強熱心で、将来は「国連やユニセフ(国連児童基金)のような世界で人の役に立つ職業に就きたい」と考えていたという。
岡崎さんは09年から愛さんが描いた絵本や手紙の朗読や講演などの活動を始めた。21年度に県犯罪被害者等支援検討委員会の委員となり、自身の体験から意見を述べた。
事故当時は「頭が真っ白な中でも事件対応などで次から次へと難しい判断を迫られた」と振り返り、「当時、交通事故や犯罪被害者支援に詳しい弁護士を紹介されていたら、あんな判断はしなかったという後悔が今でもある。事故直後から相談できる体制を」。また「姉が大好きだった」という次女(29)は事故後に激しく落ち込み「自分が代わりに死ねばよかった」と言うほど追い込まれていたといい「きょうだいの悲しみは見落とされてきた。早めにケアすることが大切だ」。ともに、22年4月施行の条例に一定程度反映された。
同種条例は市町村にも制定されてこそ身近で迅速な支援につながるが、県内59市町村のうち福島、白河、喜多方、南相馬、本宮の各市など25市町村のみだ。
会津若松、郡山、いわきの各市など10市町村は見舞金の制度があるが、「やはり条例がないといざという時に被害者は救われない」。14年に犯罪被害者らが設立した「被害者が創る条例研究会」が条例案を紹介し、弁護士の泉房穂・前兵庫県明石市長らも寄稿するブックレットを会津若松市立会津図書館(同市栄町)に寄贈した。
ブックレットは同会のホームページでダウンロードでき、岡崎さんも希望する自治体があれば寄贈する。岡崎さんは「犯罪被害には、誰がいつどこで遭うか分からない。条例の有無で支援に格差が生じないよう、全市町村に制定してほしい」と訴える。
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