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装着すれば歩行楽に 片まひ患者向けロボット「inoGear」開発

毎日新聞 / 2024年12月3日 8時45分

「イノギア」を使ったリハビリのイメージ。装着したパッドから強い力がかかり姿勢が安定する=奈良市左京6のイノマーで2024年11月12日午前10時31分、山口起儀撮影

 脳卒中で片まひの状態になり、歩行が困難な患者が身に着ければ歩行が楽になるロボット「inoGear(イノギア)」を奈良市の企業が開発している。歩行時に腰が引けるような姿勢になることが多い片まひ患者が姿勢を真っすぐに保って踏ん張れるよう支援する器具で、効率的なリハビリに加え、理学療法士の作業負担を軽減する効果も見込まれる。

 手掛けるのはイノマー(奈良市左京6)。人の能力の拡張につなげるロボットなどを開発する「SHIN―JIGEN(シンジゲン)」(同)がイノギアを開発するために、4月に設立した。

 イノギアは、モーターとワイヤーで動く専用パッドを、でん部と腰、太ももの3カ所に装着▽ハンドグリップ式リモコンのボタンを押すと一瞬で「でん部を体の正面方向に押し込む力」と「姿勢を支える力」、「脚を後ろに引っ張る力」が強く働く▽人が脚で踏ん張る姿勢が取れる――という仕組み。パッドにかけられる力がかなり強く、股関節が自然に伸ばされ、歩行しやすい安定した姿勢になるのが特徴だ。

 記者も試しに装着してみた。スイッチを押すと、かなりの力がそれぞれの部位に加わり、直立の姿勢が維持できた。支えられているような感覚で、力を抜いても転びそうにならない安定感を感じた。

 リハビリ現場では、腰から脚の付け根の筋肉が弱まって姿勢が不安定な患者を理学療法士が支えたうえで、手で股関節を強く押しながら、しっかりと足を振り出せるフォームに改善するよう支援をしている。しかし、強い力で股関節を押さなければならず、相当な負荷がかかる。このため、療法士の技能の個人差も開きやすくなってしまう。

 イノギアは病院のリハビリ現場の協力を得ながら、実際に股関節を手の力で押す理学療法士の動きの再現に近づけており、他の器具にはない機能を有する。そのため、療法士の作業負担の軽減や、技能の平準化などの効果が期待される。

 試作モデルは完成し、現在は器具の着脱性や使いやすさなどを改良中で、25年秋の製品化を目指す。販売価格は30万~50万円。進化させたAI(人工知能)搭載モデルの開発もスタートしている。

 中小企業庁の「成長型中小企業等研究開発支援(Go―Tech)事業」に採択されたプロジェクトで、これまで東京科学大や東京大医学部付属病院、京都大原記念病院と共同で、実証実験などを重ねながら開発を進めている。

 桂典史社長(50)は合気道の師範代でもあり、日常的に「姿勢」への関心が強く、合気道の体の動きや力の使い方などをヒントに開発に踏み切った。「運動機能が落ちた人を手助けしたい。将来は運動機能の衰えを止めるような器具を開発したい」と夢を語る。【山口起儀】

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